【受験体験】パイロットになるには学費2000万円 狭き門…再受験でかなえた夢
「パイロットになりたい」という夢をかなえられる大学を探して、オープンキャンパスへ何度も足を運んだという、桜美林大学1年の西山和博さん。オンラインの学校説明会などに参加するだけでなく、実際に大学まで足を延ばして雰囲気や施設を見て回ったことで、大学への志望意欲が高まったと言います。高校時代にオープンキャンパスに参加する意義を語ってもらいました。 【写真】「オールジェンダートイレ」ICUや東大に 工夫したのはどこ?①
――最初にオープンキャンパスに行ったのはいつですか。 高3に進級する春休みです。ただ、コロナ禍で来場型のオープンキャンパスを実施している大学が少なかったので、当時は実際に行けたのは桜美林大学と東海大学の2校だけでした。桜美林大学には航空・マネジメント学群フライト・オペレーションコース、東海大学には工学部航空宇宙学科航空操縦学専攻というプロのパイロットを養成するコースや専攻があり、オンラインの学校説明会に参加したのち、大学まで行ってみることにしました。 ――オープンキャンパスに行こうと思ったきっかけは何でしょうか。 大きなきっかけになったのは、高2の夏に参加したANA(全日空)のチャーターフライトイベントです。小さい頃から飛行機が好きで、漠然と将来はパイロットになるか、航空業界に関わる仕事に就きたいという夢を持っていました。それが、イベントで制服をビシッと着た機長の姿を目にしたことで、「パイロットになりたい」という夢が具体的な将来像になりました。パイロット養成コースがある大学を調べたのは、そこからです。
空港に隣接するキャンパス
――実際に大学を訪れて印象に残ったのは何でしたか。 桜美林大学は飛行訓練装置などの設備が整っていて感動しました。教授や大学生と話す機会もあったので、4年間のカリキュラムや、フェイル(パイロットの資格訓練から脱落すること)の割合なども聞くことができました。フライト・オペレーションコースは全寮制なので、自分も仲間に入りたい気持ちが強くなったことを覚えています。一方、東海大学は歴史があるぶん参加者も多く、見たいところをじっくりと見られないまま帰ってきたのが残念でした。 ――じっくりと見られたかどうかで、印象が変わってしまいそうですね。 そういう意味でも印象に残ったのが、高3の夏に行った熊本県にある崇城大学工学部宇宙航空システム工学科航空操縦学専攻のオープンキャンパスでした。多くの大学のパイロット養成コースは海外で飛行訓練を行いますが、崇城大学は空港キャンパスと熊本空港が隣接しています。そのうえ大学が訓練機も所有しているので、すべての課程を国内で完結できるところが魅力です。 でも、キャンパスがあるのは熊本県。東京からは遠いので二の足を踏んでいたのですが、東京都内で行われた大学説明会に行ってみたところ、先生方が「オープンキャンパスにぜひおいで」と熱く誘ってくださり、夏休みに両親と旅行がてら思い切って熊本まで行くことにしました。 ――行ったかいはありましたか。 教授だけでなく、学生や卒業生が「わからないことは何でも聞いてください。わかるまでお話しします」と熱く言っていて、熱量の高さを感じました。また、学生の方に面接試験を受けるコツについて質問したら、「そもそも自分はどうしてパイロットになりたいのか。面接ではそれを言語化して伝えることが重要だよ」とアドバイスしてもらい、改めてそのことを自分自身に問いかけるきっかけになりました。また、熊本県の土地勘が全くなかった僕には、キャンパスの周りにはお店など何もないことがわかったのも、大事な収穫でした。 ――崇城大学には両親と行ったということですが、オープンキャンパスに一人で行くのと、家族と一緒に行くのとで違いはありましたか。 パイロット養成コースは、学費が4年間で2000万円程度とかなり高額です。でも、親もオープンキャンパスに一緒に行ったことで、パイロット養成コースへの理解が深まったようです。「いい大学だね」と言ってもらえたのは、自分自身の安心感にもつながりました。 友達と一緒にオープンキャンパスに行っても、志望学部や学科が違うと別行動になってしまうし、自分のペースで見て回れません。ですから友達と行くよりかは、一人のほうが僕としてはよかったですね。ただ、志望大学に不安要素や迷っていることがある人は、保護者に同行してもらって一緒に考えるといいと思います。 ――オープンキャンパスに行ったことは、志望校決定につながりましたか。 大学の志望順位が大きく変わりました。充実した設備や教授や学生の熱意に惹かれて、崇城大学が第1志望になりました。オープンキャンパスに行っていなかったら、崇城大学は受験すらしなかったと思います。 ただ入試では力及ばず、航空機の整備管理を中心に航空関係の勉強ができる桜美林大学の航空・マネジメント学群整備管理コースに進学したのです。でも、パイロットになりたい気持ちがどうしても消えなくて…。いろいろと悩みましたが、再受験を決意しました。 改めて行きたい大学から考え直して、同じ桜美林大学の航空・マネジメント学群フライト・オペレーションコースを受験したところ、今度は無事に合格しました。パイロットを目指して24年春から、改めて大学生活をスタートすることになったところです。 ――それは、おめでとうございます。最後にこれからオープンキャンパスに行く高校生にアドバイスをお願いします。 実際に大学に行くことで、オンライン説明会や紙のパンフレットなどではわからない情報がたくさん得られます。例えば僕の場合、大学自体が受験生に対してどれほどの熱量を持っているか、教授と学生との距離感が近いかなどは、行ったからこそわかったことです。校舎や設備の新しさや、トイレのきれいさなども大学ごとに違っていて、意外に重要に思えたりもしました。受験期はなかなか時間も取れないと思いますが、気になる大学にはぜひ足を運ぶといいと思います。 ※学年等は取材当時のものです。
朝日新聞Thinkキャンパス