祝受賞!直木賞作家・一穂ミチさんが「会社員を辞めない理由」|VERY
今やれることはさっさと手をつける
──VERY世代は、仕事と家庭を両立するなかで「これはあとでやろう」「週末にやろう」と思うと目算が狂って後でパニックになることも。一穂さんはどのように優先順位をつけていますか。 実は仕事のキャパをコントロールすることが苦手なんです。この仕事をやりたいなと思ったら後先考えずに引き受けてしまうことも多く、後でどうしようかと頭を抱えることも。なるべく締め切り日にかかわらず、早くできるものはさっさと手をつけることを心がけています。締め切りまで余裕がある原稿チェックも、なるべく寝かせず、すきま時間に進めてしまうとか。目についたことから片付けていくと、「ついでにこれもやっちゃおう」と弾みがつくタイプです。家事も同じような気がします。小さなゴミから捨て始めると、気づけばまとめて断捨離ができてしまうことも。すぐできることほど手を動かしてしまうと楽だなと経験上思っています。 ──執筆の依頼もどんどん増えているかと思いますが、仕事を受けすぎてしまって失敗してしまった、ということはなかったのでしょうか。 実は、小説の締め切りに関してはここでは言えないくらいギリギリなことがたくさんありましたが(笑)。基本的に、できないときは担当に正直に報告します。そうすると、「何日までは待てます」と言ってもらえることもあって、改めて対策ができます。予定通りに進めるに越したことはありませんが、困っているときは具体的な形でSOSを出すと、相手も動きやすいような気がします。経験上、「もう全然間に合わない!」というような、気まずいときほどさっさと白状したほうがいいです。どうせいつかバレるので(笑)。
睡眠は短め「一日2回」眠りにつく習慣です
──読者は、「本を読む時間や自分の時間がない」という人も多いよう。一穂さんは漫画やアニメ、お笑い好き。インプットの時間はどのように作っているのでしょうか。 ラジオはおもにポッドキャストで、通勤中に聴いています。最近よく聴くのは「マユリカのうなげろりん!!(ラジオ関西)」など。歩きながら、気づけば声に出して笑ってしまっていることもありますね。紙の本は場所を問わずお風呂のなかで読んだり、電車に乗っている5分間だけ読んだり。ほんの数ページでも、「ちょっとは読めたぞ」という自己満足です。映画も好きなので、締め切りの合間を縫って映画館を2、3軒はしごすることもあります。YouTubeや動画配信サービスでお笑いや怖い話の動画を見るのも楽しみです。 ──煮詰まってしまったときはどうやってリフレッシュしていますか? ぼんやりと頭を空っぽにして散歩します。何も考えていないつもりでも、落葉から季節の移ろいを感じたり新しいお店ができているなと気づいたりして、気持ちが切り替わります。ゆっくり湯船に浸かるのも好きです。お風呂で湯船に浸かる人と浸からない人は寿命に差が出るらしい、という記事を新聞で読んだことも影響しています(笑)。会社の勤務時間が、深夜から朝までの夜勤なんです。帰宅したら食事や入浴をして執筆して、昼に2時間くらい寝て。また夕方に起きて執筆やメールの返信をして、4時間ほど寝てから仕事に向かいます。2回に分けて寝るというと細切れのようですが、私の体質には合っているようでむしろ一日2回も眠れるのがお得な感じです。「おやすみなさい」って言葉が一日に2回も言えるんです。個人的にはそれが幸せだなと感じています。