香りはバナナ、味は焼き芋…「東京島酒」ってどんなお酒? 国が18年ぶりに「お墨付き」、都心から100キロ以上離れた島々の挑戦とは
そんな中で起きたのが、2020年の新型コロナウイルス禍だった。イベントの中止や、飲食店の営業自粛が相次ぎ、需要が大きく落ち込む中、各島の蔵元がリモートで東京島酒の今後について意見を交わした。状況を変えるにはもっと思い切ったアピールポイントが必要―。打開策として浮上したのが、ブランド化につながるGIへの指定だった。 ▽「シャンパン」や「スコッチ」に肩並べる?GIとは GI(Geographical Indication)は特別な生産方法や歴史のある農林水産物などを、産地名を冠した地域ブランドとして国が保護する制度だ。国際貿易が盛んな欧州では広く認知されており、フランスの「シャンパン」や英国の「スコッチ・ウイスキー」などが知られている。 国内では長崎の「壱岐の麦焼酎」や沖縄の「琉球泡盛」といった、元々知名度のあるブランドを追認する形が多かったが、国は酒類の輸出促進を目的に2015年に制度を大きく改正。それまであいまいだった指定基準が「特性が産地に由来すること」「原料や製法が明確であること」などと明記され、日本酒やワインなどの指定が各地で相次いだ。
「コロナ禍の中、これからも酒造りをできるかどうかの瀬戸際だった。だからこそ、伊豆諸島で一つになってGIを取ってみようという思いにまとまった」(小宮山さん)。各島の蔵元同士、話し合いを重ねながら原料や製法を細かく規定。固有の歴史や風土に根差す酒であることをPRした結果、今年3月、焼酎では18年ぶりの指定が実現した。 八丈島には現在、本土の飲食店からの問い合わせや視察が相次ぐ。小宮山さんは海外本格展開を視野に、台湾やフランス向けに東京島酒の輸出を始めた。海外の蒸留酒はウイスキーやジンなどが主流。アジアでは韓国のチャミスルなどが知られているが、日本の焼酎の存在感はまだまだだ。それでもゼロからブランドを育ててきた小宮山さんは「世界有数の知名度がある都市『東京』の名前を掲げられる看板は大きい。目標はフランス料理を食べながら飲めるような焼酎を造ること」と意気込む。 ▽「島でしか出せない味を、多くの人へ」広がる取り組み