2024年、あの人の偏愛ベスト・ミュージック vol.2 Natsuki Kato (Luby Sparks)
2024年いちばん聞いたのはどの楽曲? 音楽をこよなく愛するヌメロ注目のアーティストに、その人だけの“超偏愛”ベスト・ミュージックを聞いた。第2回目はカルト的人気を誇るオルタナティブロックバンド、Luby SparksのブレーンNatsuki Katoが登場。
1「Headliner」Pretty Sick
NY出身のサブリナ率いるPretty Sickは、2023年に韓国のフェスで共演して以来、東京でツーマンライブを開催したりと公私共に仲良くしているバンド。そんな彼女らが去年、次に出す曲はエレクトロな新路線なんだと教えてくれてずっと楽しみにしていた。宣言通り、これまでのファジーなギターは影を潜め、代わりに全編に渡って打ち出される上品なビートと妖しげなシンセサイザー、緻密に組み込まれたボーカルのレイヤー。そしてその不穏さが一気に昇華される1:48~の転調は、僕が今まで聴いてきた転調の中で一番美しかった。
2「Anthems For A Seventeen Year-Old Girl (From “I Saw The TV Glow”)」 yeule
ずっと日本公開を楽しみにしているA24制作の青春ホラー映画『I Saw the TV Glow』。今年、インドへライブしに行った飛行機の中で一足先に鑑賞。Alex GやSnail Mailらが参加したインディーロックの豪華ランナップによるサントラの中でもひときわこの映画の世界を彩っていた楽曲。シンガポール出身のSSW、yeuleが2000年代カナダのバンド、Broken Social Sceneの名曲をエレクトロ・フォークなアレンジでカバー。映画の肝となる90年代VHSのピンク・ネオンなイメージと、曖昧なまま過ぎ去ってしまった思春期を見事に表現していて、映画冒頭からグッと心を掴まれた。
3「Bon Bon」Fcukers
今年はCharli XCXの『Brat』を皮切りに2000年代を彷彿とさせるクラブ・ミュージック的なサウンドがトレンドになっていたと思う。NYを拠点に活動するFcukersはまるでいち早くそれを予期していたようだった。実は2023年に来日公演を果たしていた彼ら。たまたまメンバーの男の子とカラオケに行ってインスタを交換したが、その後大手レーベルとサイン、LCD Soundsystemとのツアーとこのバンドの鰻登りなサクセスぶりは側から見ていても気持ちの良いものだった。あの時はまだ3曲ほどしかなかったSpotifyのディスコグラフィに満を辞して追加されたこの「Bon Bon」はシンプルすぎるリリックとキャッチーな“ボンボン”フレーズ、そして万人をダンスさせる硬派なハウス・ビートにもうすでに200万再生を超えているのも大納得。