いのちの電話「受けきれない」高齢・介護で愛知相談員半減 対応の20倍着信
講習が長期間 参加の壁にも
相談員はボランティア。連盟基準を満たした内容で、電話相談の基礎知識や人への広い知識や関心、価値観、他者理解、傾聴力、対話能力など必要なことを身につける養成講座を1年間受講後、相談員として認定。のちに半年間の実地研修を経て、相談員として参加できる。愛知の場合、相談員1人につき月に5日程度、1日あたり3時間半ほど電話対応を行っている。 相談員希望者が少ない点について兼田さんは「講習期間を短くするなど参加しやすくする対応をしているが、無償で自分の時間を活動に充ててくれるという人は、なかなかいない」と、厳しい現状を吐露する。「年間運営で1500万円かかるが、その財源は助成金と寄付金のみ。相談員への賃金支払いは現実的ではない」と肩を落とす。 相談員は、愛知だけではなく、全国的に減少している。日本いのちの電話連盟によると、相談員が最も多かったのは2001年で、全国に約7900人いたが、最新の集計では6500人ほどに減ったという。
「最後のとりで」守るため 相談員増狙い養成講座PRも
相談員希望者の志望動機は「人の役に立ちたい」ということや「身内に自死した人がいて、つらい経験を何らかに生かしたい」というケースも。しかし、講習が進むにつれて、相談員の大変さが分かってきたり、家族の介護に対応することになったりして、希望者の半数は途中で辞退するという。 相談員減少を食い止めるため、愛知では初めて、相談員講習制度があることをPRする説明会を今年2月に実施し、参加した25人が受講を始めたという。応募数は通常募集の倍近くあったため、説明会は一定の効果があったと見ている。 相談員歴6年の男性(64)は「自殺しようとしている人が、わざわざ電話をかけてくれるということには、何らかの意味があるはず。それをひもとこうと相手の話を聞くことで、話している相手が考えに整理がついて落ち着いてくれると、やりがいを感じる」と話し「時にくじけそうにもなるが、いのちの電話は、自殺を考える人にとって最後のとりでであると考えて、携わっている」と気を引き締めた。 「通信教育などで心理学を学びながら続けている」という、相談員歴10年の主婦(56)は「当初は、相談相手に感情移入しすぎることもあったが、今は気持ちが切り替えられるようになった。心理学に興味がある人は、長続きするかも」と話した。 協会は、悩みを抱える若者を笑顔にしようと、さまざまな情報を発信する名古屋市主催のイベント「スマイルデーなごや2017」(8月1日、オアシス21銀河の広場)で協会ブースを設け、いのちの電話の周知や、相談員募集をPRする。準備を進める兼田さんは「(いのちの電話の)ニーズがあるのはよく分かっており、何とか対応したい。現状は相談員養成講座があることを広く知ってもらい、相談員になってくれる人を増やしたい」と意気込んだ。 (斉藤理/MOTIVA)