いのちの電話「受けきれない」高齢・介護で愛知相談員半減 対応の20倍着信
自殺予防のため、24時間年中無休で悩みを電話で聞く「愛知いのちの電話」(名古屋市)の相談員が不足している。相談員の高齢化や、家族の介護に対応するために辞めるケースが多く、ピーク時の半数にまで減った。年間約1万4400件の着信に30~60歳代の約100人が交代で対応するが、すべての着信を受けることができていない。原則ボランティアのため、相談員希望者も少なく、運営団体は増員の方策が見いだせずにいる。
英国発祥の電話相談 日本は全国50カ所以上に相談電話拠点
いのちの電話は1953年、英国のロンドンで、自殺した少女のことで心を痛めた教会の牧師が、新聞広告に「あなたのいのちを絶つ前に、私に電話ください」と、自分の名前と電話番号を掲載したことが始まり。これ以降現地では「サマリタンズ」(良き隣人)という自殺予防活動が展開されている。 日本では71年に東京で始まり、85年には東海3県で初めて「名古屋いのちの電話」が愛知県でスタート。その後「愛知いのちの電話」に改称し、名古屋で経験を積んだ相談員が中心となって、岐阜県や三重県にも、相談電話窓口を開設した。全国ネットワークを形成するのは日本いのちの電話連盟で、全国約50カ所に電話窓口がある。それぞれの運営団体は社会福祉法人やNPOなどさまざま。運営にかかる費用は、助成金や寄付金で賄われている。
着信は実対応件数の20倍……対応「5%」厳しい現実
6月のとある平日の午後3時ごろ。愛知いのちの電話の相談員3人が専用ブースの中で、相談電話番号=052(931)4343=にかけてきた相手の悩みを聞いていた。「この時間は、相談員が多くて比較的余裕があるが、夜間は相談員が1人になることもある」と、運営する愛知いのちの電話協会の兼田智彦事務局長(64)は説明する。 1件につき30分から1時間、傾聴を基本に対応。相談内容は、人生や心の不調、対人・家族関係など。自殺の傾向があった人の割合も1割あった。過去に協会が行った調査で、実際に相談員が対応できた数の20倍は着信があるという結果が出たことも。全ての着信に対応するには、24時間ずっと、相談員を7人置かなくてはならない計算になる。相談対応数は実際の着信数の5%という現実に、関係者は頭を悩ます。