「長崎いのちの電話」悩みや不安に応じる相談員が不足…平均年齢65歳、体調や親の介護の問題に直面
悩みや不安を持つ人の相談に応じる社会福祉法人「長崎いのちの電話」が今月、設立から30年を迎えた。これまで多くのボランティア相談員が様々な声に耳を傾けてきたが、近年はなり手不足が課題になっている。(野平貴) 【地図】長崎市の位置
「つらい思いをはき出してもらい、少しでも楽になってほしいとの思いでやってきた」。長崎市内にあるビルの一室で、相談員の男性(84)が静かに語った。
男性は、設立された1994年から相談員を続けている唯一の「一期生」だ。当時、事務所は木造住宅の和室に置き、畳に座って電話を受けていたという。死を予感させるような相談もあり、男性はその都度、相手の思いを受け止めながら応じてきた。
ここ数年の相談件数は、コロナ禍で体制を縮小した2021年度を除き、年間1万件前後で推移している。23年度は9296件で、うち自殺に関する内容は約7・5%に当たる701件あった。
一方で、ピーク時には120人ほどだった相談員は減少を続けており、現在は約90人。年中無休で受け付けていることから、安定した運営には少なくともあと20人ほど必要という。平均年齢は65歳で、相談員の体調の問題や親の介護といった問題に直面しやすく、さらに減っていく可能性がある。
相談員が不足すると、時間帯によっては1人で対応せざるを得なくなり、電話がつながりにくくなるケースも出てくる。このため、同法人は今年6月、長崎県佐世保市に分室を設けた。同県北地域の相談員が長崎市に通う負担を軽減し、人材確保につなげるのが狙いで、今後も同県諫早市か同県大村市に分室を置く予定だ。
近年はインターネットの普及で、誰もが自身の悩みを気軽に発信できるようになった。ただ、同法人の評議員で臨床心理士の前田和明さん(64)は、「傾聴の訓練を受けた相談員が話を聞き、受け止める点に『いのちの電話』の存在意義がある」と話す。
相談員になるには有料の養成講座を受講する必要があり、相談員として認定された後も継続して研修を受けなければならない。同法人事務局長の田村繁幸さん(77)は「できる限り多くの人に寄り添うために相談員を確保したい。少しでも興味があれば応募してほしい」と呼びかけている。