報道現場から学ぶ、チーム活性化のための“3つのコミュニケーションスキル”
元NHKキャスターとして「おはよう日本」「首都圏ネットワーク」などに出演し、現在はフリーアナウンサーとして多方面で活躍する牛窪万里子さん(株式会社メリディアンプロモーション代表取締役)。牛窪さんは、『なぜか好かれる人の「言葉」と「表現」の選び方』など、多くのビジネス書も執筆するなど、言葉と表現によるコミュニケーションのプロフェッショナルだ。そんな牛窪さん執筆の連載「報道現場から学び取る“組織を活性化する”コミュニケーション」をお届けする。(ダイヤモンド社 人材開発編集部) ● 円滑なコミュニケーションが組織の活性化に不可欠 私は一般企業から放送業界に飛び込み、これまで約30年間、現在に至るまで放送に携わってきました。スタートはNHKでした。放送業界に転身してからは「スピーディーさ」「決断力」「客観性」などあらゆる対応力が求められました。現場では、瞬時に情報を集め、分析し、組織で共有、意思決定までをスピーディーに行うことが求められます。毎日、生放送という目まぐるしい時間との闘いでもありました。瞬発力をいかに身につけるかが問われる業界です。その慌ただしさは、一般企業とは少し異なるかも知れませんが、意思決定までのプロセスにおいては、一般企業でも生かせる面があり、組織を活性化させるための重要な要素も含まれていると感じています。 組織の活性化には、円滑なコミュニケーションが不可欠です。私が経験した報道の現場では、先にお伝えした情報の正確さやスピードが求められるだけでなく、チーム間の密な連携も重要視されます。チーム内の信頼関係を構築することが、効果的な情報共有の鍵となります。 ここでは、報道現場で培われるコミュニケーションスキルが、どのように組織を活性化させるかを考察します。
● 【コミュニケーションスキル1】 情報の透明性と迅速な共有 報道現場では、アナウンサー、記者、カメラマン、編集者など、専門性をそれぞれ持つメンバーがチームとして構成されます。このチームが一体となり、「情報を迅速、かつ正確に」視聴者に伝えることが使命となります。取材現場で得た情報を一刻も早く社内に共有し、適切な形で世間に届けるという流れです。そのために情報の透明性と速さが常に求められます。 私が研修や講演会で伺う多くの企業では、情報が一部の層に偏ってしまい、現場で働く社員には十分に伝わっていないことがあると聞いています。しかし、組織全体が活性化するためには、各部が常に最新の情報にアクセスでき、トップ層の意図や方針を理解している状態が望ましいと言えるでしょう。「情報は迅速、かつ正確に共有する」という報道での共通意識は、企業でも応用できることだと思います。 そのために必要な手段としては、情報共有の仕組みを整え、透明性を高めることです。クリアなコミュニケーションが求められます。報道現場では、特に放送前にはスタジオに関係者が一堂に集まり、放送を終えるまでの時間、情報共有は、直接、密に行われることが日常です。生放送はかなりの緊張感と集中力を要します。放送をゴールとして、そこまでのプロセスにおいても、メール、オンライン、対面を組み合わせながら何度も打ち合わせを重ねていきます。ゴールが明確に認識されていることが大きなモチベーションにもつながっていると感じます。社会人としての私のスタートは一般企業でしたが、放送業界に転身して初めて感じた違いはここにありました。 情報共有の仕組みづくりの方法としては、まず、定期的な全社ミーティングなどを通じて、各現場の声が直接共有される場をつくることです。コロナ禍を通じてオンラインミーティングの手段も使えるようにはなりましたが、対面に比べると言葉の印象が薄く、記憶に残りにくいというアンケート調査の結果もあるようです。話し合う内容によって、対面と非対面のコミュニケーションの使い分けを考えなくてはなりません。 さらに、情報交換するための環境づくりも大切です。昨今、フリーアドレスを導入する企業も多くなっているようですが、人が気軽にコミュニケーションを取りやすくなるというメリットがある一方、固定席がないため、探したい人がどこにいるのか分からないといったデメリットもあるため、居場所を可視化するシステムなどの活用を始めた企業も多いようです。それぞれのメリット、デメリットを考慮しながら、どの手段が自社のコミュニケーションツールとして適切なのかを判断する必要があると思います。