「7番の左サイドバック」の正当な継承者。鹿島アントラーズユース・佐藤海宏が手にしたキャプテンとしての初勝利【NEXT TEENS FILE.】
「早い段階で足が攣っちゃったんですけど、応援があったから踏ん張れましたし、走れたと思います」。スタンドから送られる後輩たちの声が、佐藤の止まりかけている足を、一歩前へ、一歩前へと、踏み出させてくれる。そして、とうとう試合終了を告げる主審のホイッスルが耳に届く。
「終わった瞬間はホッとした気持ちが一番大きかったですね」。ピッチとスタンドで戦い切り、アカデミー全体で掴んだ今季のプレミア初勝利。試合後にみんなで飛び跳ね、歌った“オブラディ”が、聖地のスタジアムに響き渡った。
『アントラーズの7番』と言えば、左サイドバックのイメージがある。相馬直樹に新井場徹。クラブ史に残るレジェンドが付けてきた番号だ。そんな伝統の7番を、佐藤は2年生だった昨シーズンから背負っている。
「去年は“パンフレット”を見て初めて知ったんですけど、その時は『間違えたんじゃないかな』と思って(笑)、ビックリしました。でも、今は結構気に入っていますし、『サイドバックで7番ってカッコいいかな』って。今年も7番を付けさせてもらっているので、愛着が湧いてきていますし、やっぱり『アントラーズの7番』には伝統があると思います」。カシマスタジアムのタッチライン際を駆け上がる左サイドバックには、やはり『7番』が良く似合う。
初勝利は手繰り寄せた。いよいよここからが反撃の時。佐藤が言葉に力を込める。「ヤナさん(柳澤敦監督)も言っていたんですけど、勝つためにはこのぐらい全力のエネルギーを出さないと勝てないということがわかりましたし、そこがプレミアの厳しさだと思うので、今日の勝ちを通していろいろなことが得られたかなと。今後もこれ以上のものを出して、上位に行けるように頑張っていきたいです」
「海のように広い心を持ってほしい」という由来の名前を持つ、2024年の鹿島ユースを束ねるキャプテンであり、7番を背負った左サイドバック。その先は輝く未来へ続くと佐藤海宏が信じている扉の鍵は、いつだって自分の手の中にある。
土屋 雅史