後悔する可能性も…“生命保険の受取人”を「配偶者」にしてはいけないワケ【税理士が事例を交えて解説】
「相続税対策の基本を知りたい」「裏ワザ的なことも知りたい」「何より、円満に相続を終わらせたい」──こうした希望を持ちながらも、巷に溢れる相続税対策の情報に惑わされ、何が正しいのか疑心暗鬼になっている方は多いでしょう。相続専門の税理士であり、庶民的な家庭から100億円を超える資産家まで、多くの相続事例を担当してきた大田貴広氏の著書『相続のお金の残し方「裏」教科書 専門税理士が限界ギリギリまで教える“99%節税できて100%モメない”方法』(KADOKAWA)より、一部を抜粋して紹介する本連載。大田氏が、円満に相続を終わらせることを前提とした、効果的な相続税対策について解説します。 【早見表】年収別「会社員の手取り額」
生命保険は受取人を配偶者にすると「数百万円損をする」
生命保険は受取人を誰にするかで節税額が変わります。 生命保険を契約して受取人を配偶者にしていませんか? 実はそのままだと、将来相続税で数百万円損するかもしれません。生命保険には優遇措置がある一方、受取人次第で税金が大きく変わることもあります。 なぜ配偶者を受取人にすると相続税が増えてしまうのか、生命保険の受取人を誰にしておくと有利かを説明します。 結論を先に言うと、生命保険の受取人は配偶者ではなく、子供にしておくと有利です。配偶者を受取人にしてはいけない理由は、配偶者が亡くなる際の相続税が増えるからです。先にお父さんが亡くなり生命保険をお母さんが受け取ると、次にお母さんが亡くなり子供が財産を相続する際の相続税が増えるのです。 生命保険に加入する際、なんとなく受取人を配偶者にしている方も多いのではないでしょうか。私のお客様の中にも、夫婦それぞれがお互いを受取人同士にしている方がよくいます。ただしこのままだと将来損をしてしまいます。 ここで「配偶者に財産を相続させたほうが、特例で税金がかからないから得じゃないの?」と思われるかもしれません。確かに、夫婦間の相続であれば最低でも1億6,000万円までは相続税がかからない「配偶者の税額軽減」という特例があり、配偶者が保険金を受け取っても配偶者に相続税はかかりません。 ただし、これは夫婦のうち片方が亡くなった場合、いわゆる一次相続の話です。先にも説明した通り、俗に両親のうち先に亡くなる方の相続を一次相続、次にその配偶者が亡くなる相続を二次相続と呼びます。 一次相続で配偶者へ多く財産を残すと、配偶者の税額軽減によって相続税が低く抑えられますが、その分二次相続でかかる相続税が増えてしまうのです。 二次相続では配偶者がいない分、相続人が1人減るので、相続税の税率が上がりやすく、一時相続に比べると相続税が多くなりやすいのです。 また配偶者が先代から相続した財産やご自身で得られた財産を持っていることもありますので、一次相続で配偶者に財産を残すと相続税がけた違いに跳ね上がるのです。夫婦は2人ですので、相続税が2回かかることを忘れてはいけません。 この話をすると「そもそも生命保険には非課税枠があるから気にしなくていいのではないですか?」と質問されます。確かに、生命保険は500万円×法定相続人の数の非課税枠があるため、この範囲内であれば生命保険を配偶者が受け取っても相続税はかかりません。 ただしこれは子供の場合も同じです。子供が生命保険を受け取っても非課税枠の範囲内であれば相続税はかかりません。よって保険金を配偶者がもらって二次相続の相続税が上がってしまうより、子供が無税で受け取ったほうが得です。
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