日本初の海底水道、命懸けの海底炭鉱での仕事…日曜劇場『海に眠るダイヤモンド』で振り返る長崎・端島の生活文化
そんな日常の不便さを解消するために立ち上がったのが、海底水道プロジェクト。アメリカの原油パイプライン技術を参考に、端島と隣の高島を、本土の野母崎の水源と繋ぐ、水深45メートル、延べ11キロメートルにも及ぶ、世界でも類を見ない日本初の海底水道が造られた。 海底水道の完成後は各家庭の蛇口を捻れば水が出るようになったのだが、それまで制限されていた反動もあってか水の使いすぎが多発。最初に用意した水源地だけでは足りなくなり、最終的に大きな貯水池を造るまでの5年ほどは節水生活が続いたという。 ■「本日もご安全に!」地底を掘り進む海底炭鉱での作業は命懸け 「あの海の下を1,000メートル下に掘ると、まだ誰も手を付けていない黒いダイヤモンドが眠っとる」。 劇中のセリフ通り、端島の炭鉱員が作業する坑道はかなり深いところにあった。「東京スカイツリー(634メートル)」を埋めても届かない距離といえば、その深さがイメージできるだろうか。 炭鉱員の仕事は24時間3交代制。坑道は地熱で気温35℃、湿度80%超えの環境だ。「炭鉱員にとっては掘る作業で使う体力よりも、熱い中での作業に慣れることができるかが重要でした。慣れていないと脱水状態になってしまうので、意気揚々と坑内に入って早々にバテてしまう初心者もいたと思います」と黒沢氏が説明する。 過酷な環境下で行われる炭鉱員の仕事は、文字通り命懸け。「危険と隣り合わせの坑内での作業は日々恐怖とのせめぎ合いだったと思います。落盤や坑内火災、そしてガス爆発など、坑内での作業は様々な命の危険と隣り合わせでした。特に切羽(きりは)と呼ばれる最前線で石炭を採掘する採炭員や坑道を掘り進む掘進員は、確実に粉塵を吸い込んでしまうので…」。予期せぬ事故はもちろんのこと、長きにわたり坑内で働くことで作業中に粉塵を吸入し、「珪肺(けいはい)」という病を患う可能性もあったのだ。主人公の父も長きにわたり炭鉱で働いているため、肺が限界を迎え週に3日しか働けなくなっている。