『光る君へ』ライバル藤原伊周との「弓争い」に渋々応じた道長、『大鏡』ではむしろ好戦的だった
『源氏物語』の作者、紫式部を主人公にした『光る君へ』。NHK大河ドラマでは、初めて平安中期の貴族社会を舞台に選び、注目されている。第15回「おごれる者たち」では、独裁ぶりに拍車がかかる藤原道隆に対して、弟の道長はますます不信感を持つことになり……。今回の見どころについて、『偉人名言迷言事典』など紫式部を取り上げた著作もある、偉人研究家の真山知幸氏が解説する。(JBpress編集部) 【写真】紫式部ゆかりの花の寺「石山寺」(滋賀県大津市) ■ 『枕草子』では気さくな男として描かれる藤原道隆 権力を持つとガラリと態度が変わる人がいるが、『光る君へ』では、井浦新演じる藤原道隆が、まさにそんな人物として描かれている。以前の道隆は、公私共にソフトな人柄だったが、今や関白となり、仕事のことで弟の道長の声に耳を傾けることはない。 今回の放送では、ファーストサマーウイカ演じる「ききょう」が、高畑充希演じる藤原定子から「清少納言」という名を与えられる場面が出てきて、SNSでは「清少納言、爆誕!」と話題になった。 そんな清少納言が著した『枕草子』によると、道隆は家族や女房の前で冗談をよく言うような気さくな性格だったらしい。定子の局を訪れて、女房をからかっては場の雰囲気を盛り上げてくれる存在だった。 政治家として独裁ぶりを発揮する道隆だが、今後の展開では、清少納言らの前でジョークを飛ばす道隆の姿も描かれるのだろうか。二面性がありそうな人物として、うまく人物描写されているので、より怖さが増しそうで楽しみである。
■ 面倒くさい藤原実資を道長はどう使いこなすか 政治家として独裁者の顔を色濃くする道隆は、強引に自分の娘である定子に「中宮」の立場を与えている。 今回の放送では、道長が兄に「公の財をもって、中宮様から女房たちにいたるまで、きらびやかな装束、調度をたびたびあつらえるは、いかがなものでございましょうか」と苦言を呈することとなった。中宮のために国民の税金が使われすぎている、というのだ。 だが、道隆は聞く耳をもたず、何かと口うるさい弟にこんなツッコミを入れている。 「細かいことを申すな。おまえは実資か」 「実資」とは、秋山竜次演じる藤原実資(さねすけ)のことだ。『光る君へ』においては、自分より身分が上の者に対しても、臆せず自分の意見をたびたび言ってきた。 実際の実資も、そんな「上司からすれば扱いづらい部下」だったようだ。 道長が政権を握ってからのことである。娘の彰子を一条天皇に嫁がせるときに、道長は和歌を集めた屏風を作って、娘に持たせようと考えた。名だたる歌人たちが道長の要望に応える中、実資だけは「大臣の命令で歌を作るなどあり得ない」と拒否の姿勢を貫いたという。 ドラマでは関係が良好な道長と実資がいずれ対立するのか……と思いきや、道長は自分の命に背いた実資をその後も重用している。 実資の実務能力の高さに一目置いていたのだろう。息子の頼通の補佐まで頼むようになる。道長と実資の結びつきには今後も注目したい。