いま中国で「無差別殺傷事件」が続発している!「暴走車が人をはねる」「幼稚園や学校を襲撃する」…習近平「報復社会」の最悪な未来
中国で相次ぐ「社会への報復」
中国で暴走車が市民をはねる事件が相次いでいる。3月19日だけでも北京、遼寧省、浙江省で3件も発生し、不穏な空気が漂っている。 【画像】衝撃! 中国ではなぜ、「配達ドライバー」が続々と死んでいるのか こうした事件は近年、急速に増えている。2021年5月、大連市では乗用車が横断歩道をわたっていた歩行者に突っ込み、4人が死亡、3人が負傷した。逃亡のすえに逮捕された運転していた男は33歳だった。 2023年7月には、広東省では刃物を持った男が幼稚園を襲撃した。6人が死亡し、うち3人が子どもだった。こうした幼稚園や学校を襲撃する事件は2010年ごろから増え続けているというが、深刻さを増している。 BBCのルパート・ウィングフィールド=ヘイズ氏はこうした事件を解説して、「犯人はほぼ全てのケースで男性で、最大限の怒りを引き起こすのが目的だった」と書いている。そのうえで、多数の人を標的にした襲撃事件を中国人は「報復社会(社会への報復)」と呼んでいると伝えている(BBC NEWS JAPAN 2023年7月11日付 電子版)。 中国人男性の「社会への報復」は、日本で起きた2008年の秋葉原通り魔事件や2019年の京都アニメーション放火殺人事件を彷彿とさせる。特に前者は、親に期待されるような就職のできなかった男性が、2トントラックで交差点に突入したことで知られる。ダガーナイフで通行人を次々に襲い7人が死亡した。 中国の若者は、かつての日本の若者のように社会に深い恨みを抱いているとみられる。背景には、経済的要因があるだろう。
若者の失業率は15・3%
中国国家統計局が4月18日に発表した3月の16~24歳(若者)の失業率は、15.3%だった。2月から横ばいで高止まりの状態が続いている。 全体の失業率(5.2%)に比べて、若者の就職難は際だっている。 国際的に見ても、中国の若者の就職難は深刻だ。2022年時点の経済協力開発機構(OECD)平均の若年失業率(10.9%)を大きく上回っている。 一方、中国の第1四半期の国内総生産(GDP)は好調だった。市場予想(4.6%増)を上回る、前年比5.3%の増加だった。 中でも製造業の躍進ぶり(6.1%)が目立った。習近平国家主席が推進する「新たな質の生産力」の代表格である電気自動車(EV)関連が40%以上伸びた。 だが、不動産業は相変わらず絶不調だ。 不動産業の第1四半期のGDPは前年比5.4%減少した。4期連続のマイナスとなり、昨年第4四半期の2.7%減から下落幅が拡大している。新築住宅の販売面積も23.4%減で、昨年通年の8.2%を大きく上回った。 30年前の日本のように、中国でも「不動産価格の上昇神話は崩壊した」との嘆き節も聞こえてくる(4月12日付RecordChina)。 不動産業の低迷のせいで、中国経済は内需不足に悩んでいる。先行きが不透明なため、企業は採用拡大に慎重になっており、そのあおりを若者がもろに受けているのだ。 中国政府は景気回復のために消費の拡大を訴えているが、「笛吹けど踊らず」である。 その傾向が特に強いのが若者であるのは言うまでもない。 若者の怒りは、習近平国家主席にとって放っておけない問題になるだろう。事態は、かなり深刻だと筆者は考えている。 後編「いま中国社会でひろがる「経済無策」への憎悪…! 大量失業で火薬庫と化す若者たちの「地味婚」と「スリッパ通勤」の悲惨な実態」では、そんな中国の若者たちの苦しい現状をさらに詳しくお伝えしよう。
藤 和彦(経済産業研究所コンサルティングフェロー)