「彼の目には涙が滲んでいた」上田綺世がカップ戦終盤にレイトタックルを受けて倒れ込む。アジアカップを目前に控えて怪我が心配されるが…【現地発】
試合後、スロット監督は「アヤセ? 大したことはないと思う」とコメント
12月20日、フェイエノールトはホームにユトレヒトを招いて2−1で勝利し、KNVBカップのベスト16進出を決めた。 【画像】ユトレヒト戦の終盤、レイトタックルを受けてピッチにうずくまる上田 日本代表FWの上田綺世は60分、サンティアゴ・ヒメネスに代わって出場。すでにチームは2−1でリードしていたものの、まだ3点目を狙っていた。 ピッチに入ってから3分後だった。FWミンテーのパスを受けた上田は、やや右寄りの位置から強烈なシュートを放つと、DFに軽く触れてから右ポスト上部に当たってCKを得た。日本代表ではゴールを量産する上田だが、フェイエノールトの一員としては9月3日のオランダリーグ、対ユトレヒト戦以来、ゴールから遠ざかっているだけに、ファンに期待を持たせる豪快な一発だった。 上田がDFラインの裏へ走ったことで生まれたスペースにMFステングスが入ってくる。ステングスがゴールを奪いに行くと、上田がスッと中盤のスペースに下がる――。上田得意の動き出しは、チームメイトとの連携に発展しつつあった。 しかし、カップ戦ということもあってユトレヒトが終盤、リスクを負って反撃に出たため、フェイエノールトは防戦に回って前線までボールが届かなくなる。上田もしばしば自陣に戻って守備に加わった。 こうして迎えた後半アディショナルタイム5分、中盤に降りてパスを受けた上田を、ユトレヒトのDFフィールへーファーのレイトタックルが襲った。しばらく地面にうずくまってから立ち上がってプレーを続けた上田だったが、明らかに足を引きずっている。それでも懸命にプレーし続けた上田は、フェイエノールトの勝利を告げるタイムアップの笛が鳴り、チームメイトが喜び合っていても、ただひとり両膝に手をついたまま動くことができなかった。 やがてチームメイトと合流し、ファンの応援に感謝の意を伝えるため場内を一周した上田だったが、いつもなら大きく手を振ってロッカールームに消えていくのに、この夜は力なく片手を上げただけだった。 試合後の上田をファインダー越しに見ていたオランダ人フォトグラファーは、「彼の目には涙が滲んでいた」と教えてくれた。アルネ・スロット監督は「アヤセ? 大したことはないと思う。だって後ろから当たられただけだろ?」と会見で語り、フェイエノールト番記者たちを安心させた。 本当に何もなかったのなら喜ばしいことだ。しかし、負傷の程度は少なくとも一夜明け、それから診察して分かること。今はクラブからの発表を待つしかない。 スロット監督は私に向かって言った。 「綺世が1月、アジアカップに参加するのはチームにとって痛手だが、日本が好成績を収めて2月にフェイエノールトに合流してくれれば問題ない」 まずは彼の負傷が大したことがないことを祈ろう。 取材・文●中田 徹
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