高校&大学&社会人の交流戦が実現 アマ野球で将来の選択肢広げるウィンウィンウィンな新たな試み
野球シーズンも終わりにさしかかった今月10日、福岡市東区のマリンフィールド東浜で新たな試みが行われた。福岡県高野連、九州六大学野球連盟と社会人チームが協力して福岡県の高校生の選抜チーム、九州六大学野球連盟の選抜チームと、社会人の合同チームというカテゴリーの違う3団体のチームによる交流戦が実現した。 ■優勝は沖縄尚学! 秋季九州大会全結果はこちらから 高校選抜チームは12月に福岡県スポーツ局の事業としてオーストラリアサウスウエールズ州に派遣される県内の1、2年生16人。今秋の九州大会で8強入りし福岡の21世紀枠推薦校となった育徳館の4番・隅田勇輝捕手(2年)や福岡大会4強の修猷館の尾辻佑晟内野手(2年)もメンバーに入った。 大学選抜は九州六大学野球連盟の6チームから選抜された1年生と、2年生以上の2チームに分かれ、11月20日に開幕する明治神宮大会に出場する福岡大からも多数参加した。そして社会人チームは今月の日本選手権で初の8強入りを果たした西部ガスと日産自動車の合同チーム。試合は高校生と大学1年生、2年生以上の大学生選抜と社会人チームで行われた。 高校生の中には初めて大学生と対戦する選手も多く、目の前の大学生はまさに「生きた教材」。「木製バットなのにすごい打球を飛ばしていました。隙がないというか、どのコースでも振ってきて対応力がすごかった」と捕手の隅田は大学生の打者を間近に見るいい経験となった。尾辻は卒業後は東京六大学でのプレーを希望しているといい「大学生は高校と違ってレベルが高いと感じた。打球も強くて、いい経験ができました」と大学野球のレベルを感じ取ることができた。
「高校生は大学野球や社会人野球についてほとんど知らない」
明治神宮大会を控えた福岡大のエース朝吹拓海投手は社会人チームとの対戦で先発し2イニングを無失点に抑えた。「調整の途中だけど、社会人のレベルの高い打者と対戦できたのは良かった」と全国大会へ向けていい刺激を受けていた。リーグ戦では敵同士として対戦する選手たちがベンチで並んで仲良く話し込む光景も見られ「ベンチの中で選手同士でプレーや練習などについていろいろな話をしていた。楽しかったし、こういう試合があるのもいいですね」と大学チームを率いた北九大の山本浩二監督もうなずく。最後は社会人の選手による高校生への野球指導が行われて締めくくり。ポジションごとにグループに分かれ、変化球の握りなど具体的な指導を受ける選手もいた。高校選抜チームを率いる嘉穂東の益田和毅監督は「選手にはすごい財産になる。こういう試みを続けていけば福岡県のレベルアップにつながると思います」と初の試みを歓迎していた。 カテゴリーが違うチームとの対戦で得るものはプレーや技術面だけではない。将来の進路の選択肢が広がる貴重な機会にもなる。「高校生は大学野球や社会人野球についてほとんど知らないんです。大学野球や社会人野球を直接見ることで進路を考える材料になれば、進路の選択肢が増えると思います」と福岡県高野連の吉岡徹郎理事長は高校生にとって大きなメリットだと考えている。 実際に高校野球を取材していると東京六大学は知っているけれど、九州に大学野球のリーグがあることを知らない高校生も多い。「九州六大学、福岡六大学の大学名を知らない子も多いです」と益田監督も話す。社会人野球となるとなおさらだ。プロ野球は身近だが社会人野球に触れる機会も少なく「社会人野球でやりたい」と言う選手はほとんどいない。社会人野球はアマチュア野球の最高峰。技術やパワーでプロ野球選手に劣らない選手も多く試合もハイレベルなのだが、高校生は見る機会が少なく将来の選択肢としてイメージできないのもわかる。