「最期まで自宅で」叶えたい…“血液がん”の終末医療 在宅輸血がつなぐ家族の時間
ハードル高く実施している病院が少ない在宅輸血
午後、訪問診療に出発です。まず向かうのは市内北部の北条地区。 看護師: 「失礼します」 森さん: 「こんにちは。ちょっと楽になりました?」 女性患者: 「さあ、ちょっとはな」 2日前に転倒し、右腕が腫れてしまった女性。骨髄が正常な血液を作れなくなる「骨髄異形成症候群」にかかっていて、炎症を抑えるために血小板を輸血します。 土手百合子さん(90): 「この器量の良いの(私)がカメラに入るてな」
森さん: 「A形プラスですね。じゃあお願いします」 看護師: 「20535…」 輸血のパックが間違っていないかを確認し、点滴のチューブに接続。 森さん: 「じゃあ輸血始めていきますよ」
訪問診療での輸血が普及していないのにはいくつかの要因があります。 そのひとつが輸血にかかる時間。通常の訪問診療は15分ほどで終わりますが、輸血に要する時間はおよそ1時間。単純に4倍の時間がかかってしまうのです。
森医師、アレルギー反応が出ないか15分ほど見守ると、同行の看護師1人に後を託し、およそ15キロ離れた次の患者の元へ。治療と移動にかかる時間で一日に訪問できる患者の数が限られるのも、ハードルのひとつです。
患者・家族にとって精神的にも大きな助けに
森さん: 「アレルギーの予防のお薬入れます。ちょっと眠くなりますよ」 それでも長年、血液の病気治療に携わってきた森医師の診察と、自分の家で受けられる輸血は、患者と家族にとって肉体的にも精神的にも大きな助けになるといいます。
夫を介護 高橋恵子さん(77): 「どうしても気が滅入りそうになるが、先生が明るいからだし、看護師さんもおしゃべりをよくしてくれるので、すごく気分的に助かっている」
骨髄異形成症候群 高橋潤一郎さん(75): 「赤い血を入れるとき、入れた後は気分的にちょっと元気になる。今はどこにも行けないが、自宅でこうして生活できるのは本当にありがたい」
この日、最後に訪問したのは松前町の有光幸知さん宅。 骨髄異形成症候群の有光さんは、今年5月、体が思うように動かなくなり、松山市内の総合病院に入院。しかし、1か月足らずで自宅に戻る決断をしました。