「最期まで自宅で」叶えたい…“血液がん”の終末医療 在宅輸血がつなぐ家族の時間
南海放送
日本人の死亡原因の第一位を占める「がん」。その中でも、「血液のがん」と診断された患者の終末医療に取り組む医師がいます。家に帰りたい、という患者の希望をかなえようと奮闘する医師の姿を追いました。
地域のかかりつけ医は「血液のスペシャリスト」
お盆の最終日、今月16日。愛媛県松山市西部・別府町にある森クリニックです。 森正和医師(45)。去年10月に妻の実家であるこの内科と胃腸科の医院を引き継ぎました。 森さん: 「ちょっと胸の音聞いときますね」 午前中は、外来に… 「今から発熱外来で。ちょっと患者さんを診ます」 新型コロナの検査に…と、お盆も地域のかかりつけ医として内科診療にあたります。
こちらの病院のもうひとつの顔が… 森さん: 「やっぱちょっと、貧血が進んできてるんですね。ちょっとね、輸血をね多分入れた方が良さそうな状況になってきてるので」 「血液内科」です。
貧血から、白血病や悪性リンパ腫といった”血液のがん”まで、血液に関する病気の検査や診断、治療を行います。 実は森医師、去年まで県立中央病院の血液内科で部長を務めていた、血液のスペシャリスト。そんな森医師ならではの特別な診療があります。
森さん: 「ここが訪問診療の部屋。あっちですけど、輸血用の冷蔵庫になっている」 「血液型が書いていて、いつ作られたかとかが載っている」
輸血が必要な患者にも在宅医療を
在宅で療養を続ける患者の元に出向き、赤血球や血小板を輸血する訪問診療です。 森さん: 「血液のご病気の方は基本的には最後の終末期と呼ばれる状態になってくると、数日おきに輸血を要するような状態になってくることが多い」 県内で、ほぼここしか行っていないという訪問診療での輸血療法。 はじめたきっかけは5年前。終末期の白血病患者が自宅に帰ることを望みながら、輸血治療のため、その希望を叶えることができなかったという森医師の経験からでした。
森さん: 「ホスピスに行く転院の日は、自宅の前を介護タクシーで通って、そのままホスピスに行かれた。やっぱりちょっと何とかして、最後の残された貴重な時間を少しでもお家で過ごせるようにということもあって。それで訪問診療をするのであれば、輸血で貢献できるんじゃないかと考えて」