嵐・大野智さんめぐる“偽情報”が拡散…リポストだけでもアウト? 投稿の法的問題を整理
●特別に名誉毀損罪が成立しない場合にあたるのか
もっとも、本件SNSの投稿は、未確認情報、すなわち大野さんが大麻取締法違反という情報を真実だと信じて投稿したものかもしれません。このような場合、名誉毀損罪は成立しないのではないかが問題となります。 この点については、刑法230条の2(真実であることを証明した場合には、名誉毀損罪で処罰されないという規定)との関係もあって細かい議論はあるのですが、1)公共の利害に関する事実について,2)主として公益を図る目的で表現行為を行った場合に、3)「確実な資料、根拠に照らして相当の理由があると認められるときに限り、名誉毀損罪は成立しない」と考えられています。(最判平成22年3月15日) 本件では、2)公益を図る目的も怪しく、3)「確実な資料、根拠」があったとは到底いえないでしょうから、名誉毀損罪は成立すると思われます。
●民法上の責任
次に、民法上の名誉毀損(民法709条、不法行為)が成立するとして、損害賠償請求が認められるのか、も問題となります。 本件SNSの投稿は、不確実な情報に基づいて大野さんを犯罪者呼ばわりするものですから、不法行為の要件を満たすことには特に問題はないでしょう。 なお、民法上の不法行為は、過失によるものでも成立しますから、刑法上の名誉毀損罪よりも成立の範囲は広いと考えられます。 また、刑法と同じように、名誉毀損にあたる行為であっても、例外的に不法行為とならない場合もありえます。 具体的には、1)公共の利害に関する事実について,2)もっぱら公益を図る目的で表現行為を行った場合に、3)事実が真実であるか、もしくは事実が真実でなくても、行為者においてその重要部分について真実と信ずるについて相当の理由がある場合には、故意・過失がなく、不法行為が成立しないとされています。(最判昭和41年6月23日等参照) しかし、本件SNSの投稿について2)のもっぱら公益を図る目的だったとか、3)の「重要部分について真実と信ずる」=大野さんが大麻取締法違反と信じることについて相当の理由がある、というのは、少なくとも現時点で判明している情報を元にした場合には考えにくいように思います。