「反省しているからもう大丈夫」「普段はいい人だから」DVを受けた女性が過去と向き合うことを決断した瞬間――『ふたりで終わらせる/IT ENDS WITH US』レビュー
あらすじ 理想のフラワーショップを開くという夢を実現すべく、ボストンにやってきた若き女性リリー(ブレイク・ライブリー)。そこで、クールでセクシーな脳神経外科医ライル(ジャスティン・バルドーニ)と情熱的な恋に落ちる。幸せで穏やかな日々を過ごすふたりだったが、リリーを大切に想うライルの愛は、次第に望まぬ形で加速してゆく。それは彼女が封じたかつての記憶を呼び覚ますものだった。自分の信じる未来を手にするため、リリーは過去の自分自身と向き合い、ある決意を胸にする――。全世界で1000万部を記録したアメリカの人気作家、コリーン・フーヴァーの大ベストセラー小説を映画化。主演女優のブレイク・ライブリーが製作、主演男優のジャスティン・バルドーニが監督も務めた話題作。 【画像】DVを受けた女性を演じた女優のブレイク・ライブリー
今も多くいる、ジェンダー不平等で苦しんでいる女性
高校生の頃、私の理想の男性は「貧乏ではない人」と「暴力をふるわない人」だった。時代錯誤な田舎町に生まれ育ち、恋愛や結婚とは無関係に育ったが(田舎のせいではない気もするが)、「お金がなくても愛さえあれば幸せ」と思えるほど人生甘くないはずだと、妙に冷めていたところがあった。 また、昭和という時代は、体罰や暴力があたりまえのように日常に存在していた時代でもあった。圧倒的に体格差のある相手を力でねじ伏せるのは、戦争に匹敵する愚かな行為だと蔑視していた私は、「扱いにくいオンナ」と言われ、周囲から明らかに浮いていた。それもいま思えば、すごく変だった。 「だから日本は世界から遅れているんだ」 と、日本から一度も出たことがないのに、勝手に日本への憤りを感じていたのを思い出す。 しかし、当時「男女平等」の先進国だと思っていたアメリカでも、実は日本と同じようにジェンダー不平等で苦しんでいる女性が、いまも多くいるのかもしれない。 『ふたりで終わらせる/IT ENDS WITH US』は、そんな想像をしてしまいたくなる映画だった。
DVを受けても離婚しなかった母のようにならないために
物語は、主人公リリー(ブレイク・ライブリー)の父親の葬儀シーンから始まる。子ども時代、父親からのドメスティックバイオレンス(DV)被害にあう母親を見て育ったリリーは、世間的には尊敬されていた父親の葬儀で、「父のいいところ」5つが言えず、葬儀場から逃げ出してしまう。 生活力がないためにDVを受けても父と離婚しなかった母。彼女のようにならないために、リリーは自分のフラワーショップを開く夢を抱いてボストンへやってくる。そこで偶然出会ったのが、クールでセクシーなライル(ジャスティン・バルドーニ)だった。 「自分は脳神経外科医だ」というライルに、リリーはナンパの常套句だと取り合わない。それでも女性の扱いに慣れているであろうライルが、少しずつリリーとの心理的距離を縮めていくシーンには、「恋が生まれる瞬間」が垣間見えてドキドキした。