クルーズ船対応、責任はどこに? 新型コロナの集団感染
新型コロナウイルスの集団感染が発生したクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」。乗員乗客3711人中700人以上が感染し、死者も出ています。これに対し、国内外から日本政府の対応を批判する報道や発言が出た一方、東京都の小池百合子知事は「船籍はイギリス」と発言しています。今回のように、国をまたがる船舶内で感染症が発生した場合、どこが対応する責任を持つのでしょうか。国際法や船舶航行に詳しい専門家や弁護士に話を聞きました。
“優雅なひと時”のはずが
プール4か所にカジノ、バンドの生演奏が響き渡るバーにダンスショー……。 豪華客船ダイヤモンド・プリンセスが横浜港を出港したのは、1月20日のことです。その後、香港やベトナム、台湾、沖縄をめぐり、2月4日に横浜へ帰港するスケジュールでした。
ところが2月1日になって、先に香港で下船した乗客が新型コロナウイルスに感染していたことが判明します。船は3日に横浜港へ到着しましたが、日本政府は乗員乗客を船内にとどめ、ウイルスの感染状況を調べる検疫を実施しました。その結果、5日に10人が感染していることが分かりました。10人は国内の医療機関に搬送され入院。政府は、症状の出ていない乗客乗員を14日間船内に待機させることを決めました。 しかし、その間に感染者数はうなぎ上りに増え、その数は700人を上回りました。
国際的ルールは?
ダイヤモンド・プリンセスの騒動を受け、クルーズ旅行などを運営する「郵船クルーズ」(横浜市)は「お客様の安心安全を最優先に検討した結果」として、クルーズ船「飛鳥II」が4月に出発を予定していた「世界一周クルーズ」の中止を発表するなど、余波が出ています。 今回の場合のような船舶内の感染症対応はどこ(誰)が責任を持つのでしょうか。寄港していた国? 船の所有会社? 船籍のある国(旗国)? 実は、国際的なルールはまだ定まっていないようです。茂木敏充外相も2月21日の記者会見で、「(どこが)一義的な責任を負うというルールが確立されているわけではありません」と述べました。 なぜでしょうか。 海洋関係の法的問題が研究テーマの東京海洋大学学術研究院海事システム工学部門の逸見真(へんみしん)教授は、「今回のような3000人以上が乗るクルーズ船で感染症の問題が起こるのは、稀(まれ)なケースです」と話し、大型客船の集団感染事案がこれまでなかったため、ルールも明確にないのだと説明します。