「家康は本当に“タヌキじじい”だったのか」大河ドラマはどこまで本当? 歴史小説と時代考証を解説
NHK大河ドラマをはじめとする時代劇では「どこまで往時を再現すべきか」「どこまで現代的な感覚を取り入れても許されるのか」といったことが気になる人も多いだろう。「いつか歴史小説を書きたい」と密かに願っているRKB毎日放送の神戸金史解説委員長もその一人だ。2月26日、RKBラジオ『田畑竜介 Groooow Up』に出演した際、スタジオに歴史考証の専門書を自宅から持ち込み、このテーマについてコメントした。 【写真で見る】時代考証に関わるおすすめ書籍6選
「歴史小説」と「時代小説」の違い
ある文芸評論家が「歴史小説」と「時代小説」とは違う、と文庫本の解説で書いていたのを目にしたことがあります。「歴史小説」は、徳川家康とか織田信長とか、歴史上の人物や出来事を背景にして描かれているイメージ。それに対し「時代小説」は歴史上のある時代を舞台にはしているけれど、歴史上の出来事や有名人が出てこなくてもよく、町の長屋を舞台にした人情物語でも、架空の人物でも全然かまわない、というものです。 その境目は微妙で、きれいに分けられるわけではありませんが、時代小説は極端な話、その時代じゃなくても構わない内容、と解釈していいかもしれません。その文芸評論家が誰だったか、改めて調べても分かりませんでしたが、この評論家とは別に、直木賞作家の今村翔吾さんも次のようなことを書いていました。 私が「歴史小説」と「時代小説」の違いを尋ねられたときには、「ごく簡単に言い切れば」と断った上で、「大河ドラマのようなものが歴史小説で、『水戸黄門』のようなものが時代小説」と答えています。 DIAMOND online 2023年10月20日「教養としての歴史小説」 「水戸黄門」は言わずと知れた、黄門様が各地を回る漫遊記。黄門さまは、水戸徳川家2代の徳川光圀です。実際にはああいう漫遊はしていません。講談の世界で広まったフィクションで、そう意味では時代小説です。 大河ドラマは歴史小説だという説明はわかりますね。「関ヶ原の戦い」が何年に起きたか、徳川家康が何年に死んだか、は変えられません。ただ、人柄とか人物像は、講談などで作られてきたものがほとんどなので、「徳川家康は狸じじいだ」というのもフィクションです。 本当のところ、歴史学はそういうところは求めていません。どんな行動をして、それにはどんな行動原理があり、どんな発言があったか、ということをしっかり記録していくのが歴史学です。狸じじいだったかどうかは歴史学とは関係ありません。 ※時代考証に関わるおすすめ書籍1(神戸の本棚より) 『江戸語の辞典』(前田明著、講談社学芸文庫) 江戸語とは、江戸という都市の住民に日常使用されていたことばを指し、つまり近世後期の代表的な日本語を意味する。3万語を収める。語彙の数・用例の量・出典の範囲・説明の的確さには定評。神戸は3回完読した。