2024年開幕予定ハンドボールプロリーグ構想の問題点とは?
あくまでも最初の 3年間はチャレンジ期間。葦原氏は、「将来的にどうするか。中央集権をずっとやり続けるのか、軌道にのって くれば、それをチームに移管してJリーグ、Bリーグ方式にするのか。それは、また3年経過したところでチームの皆さんと一緒に考える」と言う。 プロリーグ構想のもうひとつの目的に代表チームの強化がある。サッカーはJリーグの 発足と同時に代表強化に乗り出しW杯出場への追い風となった。 「お金を生み出す装置ではなく代表強化のための装置でもありたい。今までは長期合宿を組んで大会に臨む形だったが、新リーグのレギュラーシーズンで高いレベルで戦う状況を作ることが代表強化につながります」 新リーグの日程を、これまでの9月始まり3月終わりの“秋春制”から、2月始まりの“冬夏制”に変更するのも、世界のタイムスケジュールに合わせた国際化をにらんでのもの。これまで秋に開催されていたアジアのクラブ選手権へもこれまでの日程では出場できなかった。 「敵は外にいる発想が大事。アジアで勝ち 、次に世界へ行く。世界を意識しないと」 ただ、代表が強化され、選手のレベルが上がるにつれ、その後、Jリーグでは人気スターが海外へ流出するという空洞化問題に直面した。葦原氏はJリーグを反面教師にこんな夢プランを描く。 「現在、男女合わせて25人くらいが欧州に行っていますが、将来的には、世界の有力選手が逆に日本の新リーグに集まる世界観にしたい」 ゆえにビジョンとして「世界最高峰リーグへ」を掲げた。 フランス、ドイツなどの欧州ではプロリーグが人気だが、1試合の観客動員は4、5000 人程度で、リーグの事業規模が1000億円を超えるような巨大なマーケットではない。 「例えばバスケットボールではBリーグの事業規模が約300億円で、世界最高峰のNBAが8000億から9000億円です。とてもNBAを超えるとは言えませんが、ハンドボールの世界では世界最高峰のリーグを狙えるんです」 世界最高峰リーグは夢物語ではない。将来的にはハンドボール専門アリーナの建設など、壮大な展開がネクストステージ。 ただ目下の悩みのひとつは、新リーグのアイコン作り。新リーグの発表会見のトークセッションには東京五輪男子代表主将で「TikTok(ティックトック)」で400万人以上 のフォロワーを持ち、プロのフランスリーグを経験している“レミたん”こと土井レミイ杏利と三重バイオレットアイリス所属 で 日本代表主将の 原希美の男女2人が呼ばれた。さらに「誰かプラスできないか」と強化委員会の意見などを参考にパリ五輪のスター候補を探しているという。 壮大なる挑戦に踏み出した葦原氏が言う。 「一部で反発もあります。でも、それで議論が巻き起こればいい。今年100年目を迎える日本のハンドボール界が築いてきた歴史や過去を否定しようというわけではない。さあ次のステージへいきましょう。発想を変えましょうということ。これからが本当のスタートです」 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)