これもホンダが世界初! 二輪用エアバッグを「ゴールドウイング」に搭載、価格は346.5万円【今日は何の日?9月8日】
一年365日。毎日が何かの記念日である。本日は、ホンダが二輪車の前面衝突時にライダーの傷害を軽減させる二輪車用エアバッグシステムを、量産二輪車用として世界で初めて開発したことを発表した日だ。約2年後の2007年に、この二輪車用エアバッグシステムを搭載した新型「ゴールドウイング」が発売された。 TEXT:竹村 純(Jun TAKEMURA) ■ついに二輪車にもエアバッグが装着 ホンダが開発した二輪車用エアバッグの詳しい記事を見る 2005(平成17)年9月8日、ホンダは量産二輪車として世界初となるエアバッグシステムを開発したことを発表した。エアバッグはハンドル中央部に収納され、二輪車の前面衝突時にクルマと同様に衝突の衝撃を検知し展開することでエネルギーを吸収し、ライダーが前方に放り出されるのを防ぐのだ。 二輪車用エアバッグのシステム構成 二輪車用エアバッグシステムは、衝撃を検知する加速度センサー、エアバッグ本体や展開用のガス発生器(インフレーター)などを収納しているエアバッグモジュール、衝突判定を行うエアバッグECUで構成されている。 前面衝突時に、フロントフォークに装着された4つの加速度センサーが衝撃を検知すると、エアバッグECUがエアバッグ展開の要否を瞬時に判断。作動が要求されると、インフレーターは瞬時に反応し、エアバッグ展開用の気体を発生させエアバッグ本体を展開させる。 展開したエアバッグは、ライダーの前方への運動エネルギーを吸収し、二輪車からの離脱速度を抑制することで、相手車両や路面などとの打撃によるライダーの傷害を軽減する。 ホンダは、衝突試験用ダミーを利用した徹底した実車衝突試験やCAE技術により、多くのデータ収集と分析を実施。さらに四輪で培ったエアバッグシステムの技術やノウハウを駆使し、世界初の二輪車用エアバッグシステムの開発に成功したのだ。 エアバッグが搭載されたゴールドウイング 二輪車用エアバッグを搭載した 「ゴールドウイング」が発売されたのは、2007年6月29日。ゴールドウイングは、北米の生産拠点ホンダ・オブ・アメリカ・マニュファクチュアリング(HAM)で生産している大型スポーツツアラーで、ホンダの旗艦モデルと位置付けられている。 エンジンは、1.8L水平対向6気筒の水冷4ストロークで、大排気量特有の力強い走りが特徴。また、総容量142Lの収納スペースや、6連奏のCDチェンジャーと上質な音響システム、ヒーターなどの防寒機能など、四輪車感覚の極めて豪華で充実した装備をしている。さらに、大きな背もたれで包み込むような後部座席は、パッセンジャーの乗車空間に配慮したシートレイアウトであり、二人乗りでの長距離ツーリングにおいても乗り心地に優れ、快適に楽しめるモデルである。 ゴールドウイングのエアバッグ装備車は、日本ではベースよりも20万円高い346.5万円で販売された。 普及しつつあるエアバッグ付きベスト 二輪車用エアバッグは、基本的には前面衝突には効果を発揮しても、側面衝突や後方からの衝突、転倒時には作動しない。したがって、正面衝突の前方しか守ることができず、ライダーが放り出されるリスクが高いことを考えると、二輪車事故での効果は限定的である。 一方で、現在普及が進んでいるエアバッグ付きベストは、バイクが衝突転倒してライダーが車体から離れると、自動で膨らんで身体(頭、胸、頸部、背中など)を保護する。身体に着けたベストのエアバッグが膨らんで身体を保護するので、エアバッグより安全で合理的と考えられる。 エアバッグ付きベストは、上着のように着用してバイク本体とは専用のキー付きのワイヤーでつながっている。事故が起こるとワイヤーのキーが外れて、エアバッグ内のボンベが作動し一気にエアバッグに空気が充填され、エアバッグの首気室、胸気室、脇・背中気室、尻気室が膨らみ、身体が放り出されても主要部を保護するのだ。 エアバッグ付きベストは、すでに白バイや高速道路会社のバイク隊員が装着しており、世界的にも徐々に採用が広がっている。バイクレースの最高峰MotoGPではエアバッグ付きレーシングスーツの装着が2018年から義務化されており、2020年から22歳以下でレースに参加する場合は着用が義務化されている。 ・・・・・・ 二輪車の衝突事故はドライバーが放り出されるケースが多いので、車体に搭載されるエアバッグの効果は小さいと思われる。エアバッグ付きベストの方が様々な事故に対応できる可能性が高く、一般的には二輪車用エアバッグと言うと、普及が進んでいるエアバッグ付きベストを指すことが多いようだ。 毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。
竹村 純