<周永康氏逮捕>中国国有企業と党幹部の強いつながり 習政権が反腐敗運動を掲げる理由
中国指導部は12月6日に、かつて政治局常務委員を努めた周永康氏の党籍剥奪と逮捕を発表しました。公式な理由としては、職権を乱用し巨額の賄賂を 受け取ったこと、親族などにも便宜を図り賄賂を融通したこと、党の機密を漏洩したこと、多数の女性と不適切な関係を持ったこと、などが挙げられています。 これまで権力闘争や政治運動(文化大革命、第二次天安門事件)によって失脚したリーダーたちは存在しましたが、これほど高位の幹部が汚職・腐敗で摘発されて失脚するというのは前代未聞です。 【図解】「法よりも上位」中国共産党と国有企業の腐敗の構図
薄煕来と関係が近く指導部に不満?
なぜ、これまで前例のなかった元政治局常務委員の逮捕が現実のものとなったのでしょうか。習近平政権は、反腐敗運動の成果として宣伝していますが、当然それだけが理由ではありません。周永康氏は、確かに有名な「大トラ」(習近平政権の反腐敗キャンペーン『虎もハエも叩く(腐敗にかかわる者は、それが幹部でも、一般の些細なものでも処罰する)』から)でしたが、彼以外にも汚職に手をそめていた政治常務委員はいるはずです。周永康氏がターゲットとなった理由は、彼が2012年に失脚した薄煕来氏と関係が近く、党指導部(胡錦濤氏や習近平氏)に対して不満を抱いていたためと見られています。 個々の噂の真偽のほどはわかりませんが、薄煕来が失脚する前に周と共謀してクーデターを起こそうとしたとか、薄煕来関係者を拘束しようとした党中央規律委員会(共産党内の汚職を取り締まる機関)や警察と、それを妨害しようとする武警(周永康の管轄、当時)の間で小競り合いが起こったとか、日頃から党幹部の情報を秘密裏に収集していた周が温家宝や習近平の親族の利権に関する情報を海外メディアにリークしたとか、様々なことが言われています。習近平氏から見ても、周永康氏の振る舞いは、党の指導を揺るがす許しがたい背信行為と映ったのでしょう。
経済成長の維持に不可欠な国有企業改革
また、習近平政権は、中国が今後も持続可能な発展を続けていくために必要な経済構造改革を推進しようとしていますが、そのうちの重要な課題の一つが国有企業改革です。中国政府は今年の夏頃から「新常態(ニュー・ノーマル)」という言葉を用いて、安い労働力と公共投資によって高度成長を実現した時期は終焉し、今後は中高速の成長が通常になるという見通し(方針)を示しています。経済発展方式を転換し、それなりに高い経済成長を維持していくためには、生産性の向上や産業の付加価値を高めることが欠かせません。そのためにも、利益率の悪い国有企業が民間企業を圧迫している現状を変える必要があります。 国有企業改革が必要だという認識は胡錦涛政権も強く抱いていましたが、利権を握る既得権益層からの抵抗にあい、ほとんど実施することができませんでした。中国の国有企業は、党幹部や人民解放軍とも強いつながりを持っており、その抵抗を打ち破るほどの実力が胡錦涛・温家宝にはなかったのです。前述の通り、周永康氏は石油閥の頭領のような存在でした。その周や彼を取り巻く石油利権関係者に容赦ない姿勢を示すことによって、習近平氏は改革に反対する抵抗勢力に対し、強い意志を示そうとしたのだと考えられます。