【UFC】3時間前に試合を受けた“漢気”ダン・イゲ、今回は14勝無敗のマーフィーと対戦「フルタイムファイターになりたかったからベガスに来た」
2024年10月26日(日本時間26日23時)、アラブ首長国連邦アブダビのエティハド・アリーナにて『UFC 308: Topuria vs. Holloway』(U-NEXT配信)が開催される。 【写真】強豪ディエゴ・ロペスをケージに追い込むイゲ メインカードの第2試合では、フェザー級でダン・イゲ(米国)が登場。MMA14勝無敗・UFC6連勝中のリローン・マーフィー(英国)と対戦する。 ▼フェザー級 5分3R リローン・マーフィー(英国)14勝0敗1分(UFC6勝0敗1分)※UFC6連勝中 ダン・イゲ(米国)18勝8敗(UFC10勝7敗) 元ボクサーのストライカーでテイクダウン&パウンドも強い無敗のマーフィーを相手に、前戦で試合3時間前にディエゴ・ロペスとの試合を受けて熱戦を繰り広げた漢気イゲは、アンダードッグの評価のなか、いかに戦うか。 ◆戦場で庭師をしているより、庭で戦士でいる方が良い ──6月のディエゴ・ロペスとの試合は、連勝中のロペスを相手に試合3時間前というオファーを受けて、フルラウンドを戦い、後半に追い上げも見せました。ハワイからいまはラスベガスを拠点にしていて、いつでも試合が出来る状態にしているということでしょうか。 「常にトレーニングは欠かさない。どんな時でも1日たりとも欠かしません。私はこの競技にすべてを捧げているし、常に強くなっていきたいと考えています。私は『庭で戦士でいる方が、戦場で庭師をしているより良い』(Warrior in the garden rather than a gardernr in the war=宮本武蔵 『五輪書』) と考えているので。そうやって日々メンタリティを保ちながら過ごしています。なので、あのオファーの電話があった瞬間、迷う事は一切なくすぐに準備ができました」 ──そういうイゲ選手は、沖縄にルーツを持つそうですね。 「あまりよく分かっていないのですが、自分の父親は日本人とのハーフでカリフォルニアで生まれて育ちました。ただ、私の曾祖父母が、第二次世界大戦中に沖縄からカリフォルニアに移って苺農家をしていたと聞いています。当時、日本人は強制収容所に入れられたりしていた事もあったので、せめて苗字の発音だけは変えなければと、イゲから“アイジ”と名乗っていたと聞きました。それくらいしか情報は知らなくて、格闘技に関わっていたのかなどは知らないんです」 ──なるほど、ハワイのご両親は何かスポーツなどもされていたのですか。 「そうですね、運動神経は父から譲り受けたと思います。父はずっとサーフィンとスケートボードをやっていたし、高校時代はレスリングをやっていて、かなり強かったって聞いています。そのままカレッジでもレスリングをして、ミリタリーのスペシャルオペレーションに所属したので。だから父が運動神経が良かったんでしょうね」 ──ハーフジャパニーズのお父様から最初の格闘技としてレスリングを習ったのですか。 「一番最初に始めたのは柔術です。ハワイに住んでいて、最初に出会ったのが柔術でした。友達の家の庭で始めて、そのままスクールに入りました。サンセットビーチ柔術のコーチはエンセン井上とイーゲン井上の練習仲間でしたし、その後、MMAデベロップメントというジムでトレーニングを始め、その後レスリングも始めて、MMAの試合をするようになって、ボクシングをやって今、ここにいるというわけです」 ──2014年にプロMMAデビューして、2015年の『PANCRASE272』ハワイ大会でプロ3戦目。当時ワールドスラムトーナメントで優勝していた中島太一選手にスプリット判定で負けしましたが、その後6連勝でDWCSを経てUFC入りを決めました。ラスベガスに移住したきっかけは? 「あの試合でナカジマを相手に3R戦えたことで、プロとしてより上で戦えると感じた試合でした。その後、ベガスに引っ越したのは、フルタイムファイターになりたかったから。何故かというと、やはりハワイでは生活費が高い事と、コーチを探すのが大変だったんです。多くのコーチが、本職は建設業などでフルタイムで働きながら格闘技を教えている。ベガスに引っ越してきてから自分の試合にしっかり集中して向き合える環境となりました。エクストリーム・クートゥアーという素晴らしいジムで素晴らしいコーチと一緒に。私のこのキャリアの成功の大部分は彼らによるものだと思っています」 ──そのときは単身、ベガスに来たのですか。 「すでに妻と結婚はしていましたが、当時は1人でベガスにきました。住むところがきちんと見つかるまで。まだお金もなくて、当時は友人のブラッド・タヴァレス(UFCミドル級)の家のソファで寝かせてもらっていました。少し稼げるようになるまで、しばらくの間そうしていました。ある程度稼げるようになって家を見つけ、妻もこちらに引っ越してきて、今は大家族ですね」 ──同郷のタヴァレスがヘルプしてくれたのですね。ジムも同じエクストリーム・クートゥアーですが、今回のアブダビ大会に、エリック・ニックシックコーチは、フランシス・ガヌーのセコンドからそのまま来たのでしょうか。 「そうですね、エリックは今こちらに来ています。サウジアラビアからまっすぐアブダビに来ました。エリックがコーナーに入ってくれるのは本当に恵まれているし、フランシスとエリックの勝利をとても嬉しく思っています。本当にすごい試合で素晴らしい勝利だった。ベガスにいる自分のチーム全員に感謝をしているし、エリック達がアブダビに来てくれてワクワクしています」 ──そして今回は、アブダビ大会に出続けてきた相手のホームともいえる場所で、14勝無敗、UFC6連勝中のリローン・マーフィーと対戦します。6月のコメインを救ったあなたが、2月大会で一度キャンセルとなった無敗のマーフィーが再び対戦相手となったことをどう感じましたか。 「正直、嬉しかったです。このチャレンジにワクワクしています。ランキングでは彼の方が上(12位)にいるし、14位からランキングを上がっていくという意味では自分にはとてもいいチャンス。梯子を昇らないといけないから。だから今回のオファーに何も不満はないし、いい試合になると思います。私はとにかくケージに入って、彼に黒星をつけようと思っています」 ──対戦相手のマーフィーに似ているトレーニングパートナーも用意できましたか。 「私のスパーリングパートナー達は世界で最高峰だと思います。私のジムは特に自分の階級、フェザー級の選手が揃っているという点では特にトップクラスなのではないかとも思いますし、その中には背の高い、リーチの長い選手もいます。ジュリアン・エローサは背も高く、リーチも長くひょろっとした選手です。ただそれを除いたとしても、私は今までの試合で背の高い選手達と試合経験があるので、あまり対戦相手の身長やリーチは心配していません。とにかく、自分が得意なところを出して、スピード、パワー、フットワークを駆使してドミネートできればと思っています」 ──ボクシングでも勝負できるイゲ選手は、2月にはマーフィーの代役のアンドレ・フィリの左ジャブにカウンターの右を当てて1R KOに下しています。今回の相手のマーフィーは無敗の勢いと同時に、テイクダウンディフェンスやガードが粗くなることがあることを考えると、MMAトータルの経験値でイゲ選手の方が上回っているという自信もありますか。 「私もそう思います。彼もオールラウンダーではあるけれど、過去の試合を見ると接戦となっている試合はすべてレスリング、グラップリングゲーム。その領域においては、私の方が100%、技術は上だと思っています。打撃においてもです。ただ、分かっていると思うけど、MMAは思った通りには進まない。もしテイクダウンとなれば、自分も受けるつもりだ。本当に面白い試合になると思う。格闘技は本当に面白くて、何があってもおかしくない。ただ、私は充分に準備はできているし、タイミング的にもバッチリです。とても調子が良くて、本当に戦える事が楽しみで仕方ない」 ──U-NEXTで観戦する日本のファンへメッセージを。 「アリガトウ! いつも応援ありがとうございます。日本は自分の行きたいところリストのひとつで、日本を訪れる事は夢でもあります。もしかしたら日本で戦う事があるかもしれないですし、ただ普通に東京で人々と会ったり、街や食事を楽しむだけでも最高だと思います。とにかく、いつも本当にありがとう。自分の試合に注目してください!」