プレミアで磨いてきたクロスから2つのゴールを演出!大津MF舛井悠悟は抜群のスピードで目の前のハードルを1つずつ乗り越えていく!
[10.20 プレミアリーグWEST第19節 東福岡高 1-2 大津高 東福岡高校グラウンド] 【写真】ジダンとフィーゴに“削られる”日本人に再脚光「すげえ構図」「2人がかりで止めようとしてる」 もちろんそのスピードは大きな武器に違いないが、それだけにフォーカスしていてはこのアタッカーの真価を見誤る。サイドを駆け上がりながら、中央の様子もしっかり窺い、最適な場所へボールを届ける。このプレミアリーグというステージで磨いてきたクロスの質にも、間違いなく自信を深めている。 「プレミアが始まった4月の頃に比べて、中の状況を見て的確にクロスを合わせるというところで、味方が走り込むところにしっかり蹴るということは、技術も上がったとは思うんですけど、より意識の方が高くなったことで、クロスが合うようになってきたのかなと思います」。 プレミアリーグWESTの首位を走ってきた大津高(熊本)が誇る、11番を託された“右の翼”。MF舛井悠悟(3年=ブレイズ熊本出身)が思考と技術を融合させて演出した2つのゴールが、チームの4連勝達成を鮮やかに彩った。 10月20日。プレミアWEST第19節。東福岡高(福岡)のホームに乗り込んだ大津のスタメンリストには、ここまで唯一欠場した第2節以外は、すべての試合で先発に指名されてきた舛井の名前も、当然のように書き込まれる。 「これまでの大津高校はプレミアリーグで首位になることがなかったと聞いているので、凄く良い経験ができているなと思いますし、確かに首位ではありますけど、相手のチャレンジを受けて立つというよりは、自分たちのサッカーに集中してやり続けたら、自然と結果は付いてくると思うので、試合前にしっかり自分たちのやることを確認して、みんなで気持ちを揃えて試合に臨んでいます」(舛井) まずは自分たちが築き上げてきたスタイルをしっかりと打ち出すこと。それはホームでも、アウェイでも、どこが相手でも変わることはない大事な核。首位に立っている大津の選手たちは、やるべきことを整理し、共有して、90分間を戦うピッチへと足を踏み入れていく。 1点目は失敗から学んだ“教訓”が生きる。前半11分。センターバックのDF村上慶(2年)が高い位置までドリブルで運び、左サイドに展開したパスをDF大神優斗(3年)がクロスに変えると、軌道はファーまで流れたものの、ボールを収めた舛井は中央を見極めながら、右クロスを放り込む。 「これまでの試合で何本か真ん中に上げてキーパーに取られるシーンがあって、あの時はクロスを上げる時にニアが空いているのは見えたので、(兼松)将とか今日は先発だった山下虎太郎とかが入ってくると思って、出した感じでした」。 狙い的中。FW山下虎太郎(2年)が果敢にニアへ飛び込み、こぼれたボールをMF兼松将(3年)が丁寧に蹴り込んだシュートは、ゴールネットをきっちり揺らす。「舛井は絶対に良いクロスを上げてくれると信じていました」と笑った兼松は、クロスを上げた11番のところへ一目散に駆け寄り、歓喜の抱擁。幸先良く大津が1点をリードする。 2点目は冷静な視点と正確な技術が生きる。13分。相手陣内の深い位置でMF畑拓海(3年)と仕掛けたプレスからボールを奪った舛井は、ルックアップして中央を見据えると、空いているコースが視界にはっきりと浮かび上がる。 「最初はグラウンダーでディフェンスとキーパーの間に速いボールを入れようとしたんですけど、マイナスにいた(嶋本)悠大が空いているのが見えて、信頼しているのでパスを出すことができて、悠大がちゃんと決めてくれたので良かったです。ちょっとボールは速かったかなと思うんですけど、アレは悠大がスーパーでした(笑)」 舛井がマイナスに折り返したグラウンダーのクロスを、MF嶋本悠大(3年)が躊躇なくダイレクトで叩いたボールは、ゴール右スミへ吸い込まれる。「そこまでやられたなという感じはなかったですけど、正直11番の個の突破にやられてしまったなと思います」と話したのは東福岡のキャプテンを務める柴田陽仁(3年)。大津のアドバンテージは2点に広がる。 試合は終盤に1点を返されたものの、リードを守り切った大津は勝点3を獲得。「正直自分の得点が欲しかったですけど、得点に絡むプレーは自分の中でも意識してやっているので、それが今日は出せて良かったなと思います」と口にした舛井の2得点に絡む躍動が、負けられないチームへ勝利という最高の結果をもたらした。 昨シーズンのプレミアでは9試合に出場して1得点を記録。最終節で初スタメンを飾ったとはいえ、なかなかコンスタントな出場機会を掴み取るまでには至らなかった。だが、今シーズンは不動の右サイドハーフとしてレギュラーを引き寄せ、年代最高峰のステージで少しずつ自信を纏ってきている。 「一度気を抜いたらやられてしまうような相手と常に対戦しないといけないので、90分間走る走力だったり、集中力を切らさないメンタリティだったりというのは、この1年間でかなり成長したかなと思います。スピードのところはプレミアでもかなり通用していると思いますし、味方とのコンビネーションで右サイドを崩していくことも、かなりバリエーションも出てきて、回数も増えていると思うので、より個で打開しても止めるのが難しいような選手になっていきたいと思います」。 50メートルを6秒フラットで駆け抜けるという脚力の持ち主は、中学時代に“陸上競技”でも目覚ましい成績を残したという。「中学校の頃に学校単位の陸上大会があって、そこで100メートルハードルに出たんですけど、熊本県で4位でした」。名門クラブのブレイズ熊本でサッカーと全力で向き合っていたため、その後はハードル競技へ本格的に挑戦することはなかったが、このエピソードからも舛井の秘めているポテンシャルが窺える。 このチームで戦える時間もあと少し。ここからの試合はすべてが超重要な一戦ばかりだからこそ、今まで以上にアクセルを踏み込む決意を定めている。「今は首位ということもあって、少し先を見がちなんですけど、まずは目の前の1試合1試合を勝つために、一戦必勝で、優勝に向かって頑張っていきたいと思います」。 自らの目の前に立ちはだかるハードルを1つずつ、着実に乗り越えて、定位置を手繰り寄せた大津の右サイドハーフ。幅広いプレーを身に付けつつある舛井悠悟が、自分の中のリミッターを外して一度走り始めてしまったら、どんなディフェンダーにとっても実に厄介極まりない。 (取材・文 土屋雅史)
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