全国でおよそ849万戸 空き家問題どう防ぐ?解体現場に密着 【WBSクロス】
いま、深刻化しているのが「空き家」の問題です。全国の空き家の数はおよそ849万戸で、7戸に1戸が空き家です。所有者を明確にするため、家の相続登記が4月から義務化されましたが、まだ問題の解決にはいたっていません。増える「空き家」の背景には何があるのでしょうか。 都心から車でおよそ1時間の埼玉県坂戸市。築46年10LDKの一軒家があります。 4年間、「空き家」の状態です。 「新しい建物になったのが、自分が大学生のとき。それから10年ぐらいは住んでいた」 (大月雅彦さん) 家を所有するのは、大月雅彦さん(66歳)。この家は雅彦さんの実家です。父の睦美さんが施設に入居したときから誰も住んでいません。家の多くが当時のままです。 空き家となった4年前から、雅彦さんは家の処分を考えていましたが、簡単ではなかったと言います。 「父は手放すのを反対していた。薄々、家の解体はわかっていたのだろうけど。自分が生きている間はこの家は残しておきたかったのかも」(大月雅彦さん) 2022年、父の睦美さんが亡くなり、家を相続した雅彦さん。毎年7万円の固定資産税の負担もあり、土地の売却を決めたところ、去年12月に購入者が見つかりました。そして家の解体を決めたのです。
迎えた解体の日。雅彦さんは取り壊しに立ち会うことを決めました。まずは、自身が学生時代に使っていた部屋から取り壊します。バールで壁に穴を開け、壁を剥がしていきます。 さらにチェーンソー、そして重機が動きだします。 「跡形もないって感じ。すごい。こうやって少しずつ壊していくんだね」(大月雅彦さん) 解体費用は600万円。これを上回る価格で売却契約が成立しましたが、複雑な気持ちもあるといいます。 「簡単に解体に『うん』と言わなかった父がいるので。その理由が少しずつ、何となくわかってくる。ただ有効利用できないなら、できる人に渡すのが一番」(大月雅彦さん) 全国で増え続ける空き家。去年12月には法改正を受け、管理が不十分な空き家の固定資産税が従来の6倍になる措置がとられました。 都内にある会社「バリュークリエーション」では、空き家の所有者と解体業者のマッチングサービスを展開しています。 今年に入り、空き家の所有者からの問い合わせは以前の1.5倍になりましたが、同社の田中佑弥執行役員によれば「結局、空き家をそのままにする。判断を保留する人はいる。理由は感情の部分だと思う。法律や仕組みができたからといって解決するものではない」と話します。