「Kポン」に再び酔いたい【朝鮮日報コラム】
「K」の名で世界で歓迎されているこんにちの韓国のありようは、多彩で計り知れない「Kポン」が各界で積み重なったことの結実だ。「豊かに生きてみよう」の熱狂は国の基幹産業を農業から重化学工業へと格上げした。「世界は広く、やるべきことは多い」という熱狂は企業に世界市場をひるむことなく開拓させ、半導体・自動車・鉄鋼などを売り出す力を与えた。行政高等考試を受けた公務員は国のシステムをデザインするという「ポン」に、外交官は韓半島の統一と繁栄に寄与するという「ポン」に、教師は国の未来を育むという「ポン」に、軍人と警察は安全な国をつくるという「ポン」に、夫婦は子が人生における最も価値ある贈り物だという「ポン」に酔い、生きてきた。しかし、アジア通貨危機を経る中でカネの匂いが「ポン」の味を圧倒し、本物の麻薬がはびこる社会になった。カネをたくさん稼ぐ順で将来の希望が序列化される国で、「お金に換算できないやりがい」などという言葉は無力だ。 米国人が、ドナルド・トランプを再び大統領に選んだ。8年前から掲げている「米国を再び偉大な国に(MAGA/Make America Great Again)」のスローガンは合成麻薬フェンタニルのように強力で、トランプを、その多くの舌禍にもかかわらず世界最強国の指導者へと返り咲かせた。急騰する物価と揺らぐ治安、人工知能(AI)の台頭、中東と欧州の戦争など激変と不確実性に満ち満ちた時代を、「MAGAポン」に酔って突破していこう-という米国人の思いが、今回の米大統領選の結果に反映された。 韓国社会は上下左右にずたずたに引き裂かれて後ずさりしているが、K政治家らは互いに争うことに忙しい。与党はいまだに検察ドラマの撮影中で、野党は防弾と弾劾の悪態を浴びせている。その間、複雑性と変動性で織り上げられた新たな世界が登場した。前人未到の変化の波を乗り越えようと思ったら、「ポン」の力であっても借りて泳ぎ切るのが急務だ。対内・対外リスクをまとめる眼目と時代精神、普通の人間らしい倫理意識をひとさじずつ混ぜ合わせたKポン製造業者が、この地に再び現れることを期待する。 ヤン・ジヘ記者