扶養内のパートで働きます。交通費が片道800円ほどかかりますが、「103万円」や「130万円」の壁は交通費が含まれるのでしょうか?
扶養内で働いて税金や社会保険料の負担を抑えたい場合、意識しなければならないのは「103万円の壁」「130万円の壁」などと呼ばれる、扶養を外れる収入額のボーダーラインです。壁を超えないように働き方を調整する際に、通勤にかかる交通費は含めるのか、除いてもよいのか迷った人もいるでしょう。 そこで本記事では、扶養内で働くときの収入の壁に交通費は含めるのかどうかを、ケース別に解説します。 ▼扶養内で働いてるけど、労働時間が「週20時間」を越えてしまった!「社会保険」に加入する必要はある?
【103万円の壁】通勤手当には1ヶ月当たりの非課税枠が設けられている
交通費が時給とは別に「通勤手当」「交通費」などの名目で支給されている場合、国が定めた非課税限度額を超えない範囲であれば103万円の判定に影響せず、所得税は課税されません。交通費の非課税限度額は、図表1のように定められています。 【図表1】
国税庁「通勤手当の非課税限度額の引上げについて」より筆者作成 交通機関を利用して片道800円の交通費がかかる場合、1ヶ月に20日出勤したとしても合計で3万2000円です。わざと遠回りをして出勤しているなど不合理と判断される事情がなければ、交通費を全額受け取っても非課税です。 ただし、交通費が別途支給されておらず時給に含まれている場合は、交通費も所得に含まれます。交通費として消費している金額も含めて103万円を超えれば所得税が課税される(扶養を外れる)ため注意しましょう。
【社会保険の扶養】130万円の壁の判定時は交通費を含む
社会保険の被扶養者資格の基準である、130万円の壁の判定時はどうでしょうか。 社会保険の被扶養者になるための収入の要件は、「年間収入が130万円未満かつ扶養者の2分の1未満である」ことです。判断の対象は所得ではなく年間収入であるため、通勤手当などの非課税の収入や手当もすべて含めて考える必要があります。 自分自身で社会保険料を負担しないでよい範囲で働きたい場合は、収入の調整をするときに、交通費を失念しないように注意しましょう。
【社会保険の扶養】106万円の壁の判定時には通勤手当を含まない
社会保険の扶養を外れたくない場合に意識する必要がある、もうひとつのボーダーラインが「106万円の壁」です。 106万円の壁とは、短時間労働者への社会保険適用拡大にともない、新たに設けられた基準のひとつの「所定内賃金が月額8万8000円以上」を指しています。判断基準となる「所定内賃金」とは、時給や日給を月額換算し諸手当を含めた金額です。 ただし、次のような賃金は所定内賃金には含みません。 ●賞与など1ヶ月を超える期間ごとに支払われるもの ●結婚手当など臨時に支払われるもの ●時間外、休日、深夜の労働に対して支払われる割増賃金など ●通勤手当、家族手当など最低賃金法で算入しないと定められたもの そのため、時給とは別に支給されている通勤手当に関しては、106万円の壁を考えるときに算入する必要はありません。 なお、106万円の壁が問題になるのは、勤務先や働き方が以下の条件に当てはまる場合です。それ以外の場合は従来の130万円の壁がボーダーラインとなることを覚えておきましょう。 ●従業員数101人以上(2024年10月からは51人以上) ●週の所定労働時間が20時間以上 ●雇用の見込みが2ヶ月を超える ●学生ではない