伊藤あおいのジャパンオープン快進撃はベスト4で幕!「外的要因にかなり弱いのが今後の課題です」と自己分析<SMASH>
大阪市靭テニスセンターで、10月14~20日にかけて開催された、女子テニスツアーの「木下グループジャパンオープン2024」。19日が終日雨で全試合が順延となったため、シングルスは20日に準決勝と決勝のダブルヘッダーを決行。予選から参戦しベスト4に勝ち上がっていた伊藤あおいは、同じく予選突破者のキンバリー・ビレル(オーストラリア)に4-6、3-6で敗れた。 【動画】伊藤あおいがツアーデビュー戦勝利と8強入りを決めたシーン ビレルのバックハンドの強打が、大阪での伊藤のシンデレラストーリーに終止符を打った。 詰めかけたファンから期待と好奇の視線を一身に集め、“らしい”プレーも要所で披露。ただ強風の中では、多くの上位選手をきりきり舞いさせてきたスライスが、あるいは滞空時間の長いループが、狙った所に決まらない。そこで「風上の時は、フォアでいつもより打っていこう」とプランBに切り替えるが、本人いわく「見事にボール1球分くらい全部ずれまして」、ポイントは相手に入っていく。 どちらのセットも先にブレークしたが、良い時間帯が続かない。伊藤の持ち味である、ディフェンス時のラストストレッチが伸びきらないのは、連戦の疲労のためだろう。試合時間は、1時間14分。強風に、伊藤の勝機も流されていくかのような試合だった。 「風下の時に、ものすごい弱さを発揮しますので」 試合後には、いつもの囁くような早口の“あおい節”で、伊藤が自己分析する。 「言っていいのかわかりませんが、伊藤あおいは外的要因にかなり弱くて。風が強かったり暗くて見づらかったりすると本当に弱い。風下からでは、どれだけ頑張って考えてもボールが狙った所に行かない。そこが難しいところではあるので、それが今後の課題ではあります」 相手にとって予測不能なプレーは、細緻な分析と戦略、そしてボール制御があってこそ可能な精巧なるガラス細工。そんな伊藤のテニスが、外的要因に影響を受けやすいのは、想像に難くない。 加えて、飄々とした言動からは心の疲労は読みにくいが、実際にはかなりの負荷があっただろう。「季節の変わり目に弱い(伊藤)」ことも重なってか、2回戦後の翌日には高熱も出たという。「寝れば寝るほど疲れが溜まるという、不思議なことが起こりまして」と目を丸めるが、それも対戦相手のレベルの向上に加え、ファンから見られる緊張感の蓄積もあっただろう。 「やっぱり、レベルの高い人と試合を続けるのは大変だなって思った」と言うが、同時に「私でも6試合連続でできるんだなっていう自信にもつながります」と振り返った。 今大会の活躍により、伊藤のランキングは151位へと上昇。来年は、1月の全豪オープンをはじめ、グランドスラム予選への出場が濃厚だ。これまで「海外は苦手」と公言し異国への遠征は可能な限り控えていたが、いよいよ活躍の舞台は世界へと広がる。 「イレギュラーにも本当に弱い」がゆえにクレーコートも苦手だが、「全仏オープンに出られるなら、さすがに出てみたい、やらなきゃいけないと思います」と言った。 父親と共に、独立独歩で歩んできたユニークなテニス道は、行きつく先で、テニス界のメインストリームに合流した。とはいえ、本人や父親の言葉を聞く限り、他者や主流に迎合するつもりはなさそうだ。 外的要因やイレギュラーに満ちた路を、独自のライン取りで進んでいく――。そんな新たな旅が、伊藤あおいを待っている。 取材・文●内田暁