最高倍率3000倍超…「習近平にすべてを捧げれば一発逆転できる」中国の就活生が殺到する"超人気職業"とは
■人気の公務員職種は倍率3572倍に ならば、こうした無為徒食に過ごすインテリ青年が、他者から尊敬されてお金持ちにもなれる立場に返り咲くには、どうすればいいか。最も確実な方法は、偉大なる国家の権威をまとうことだ。 ゆえに2024四年、中国の国家公務員試験の出願者数は過去最高の303万人を記録し、倍率は77倍(最も人気の職種は倍率3572倍)にも達した。私の友人で20代後半の中国人男性は、近年の風潮をこう皮肉る。 「文字どおりの官僚登用ですから、実態としては高考よりも公務員試験のほうが『科挙』っぽい感じがあります。往年は儒教で現在は習近平思想という、体制側のイデオロギーを受け入れて国家にすべてを捧げることで、人生の一発逆転を狙えるわけですからね(笑)」 多くの受験生を悩ませる高考は、往年でいえば予備試験の「童試」にすぎない。本物の科挙は国家公務員試験のほうなのだ。熾烈(しれつ)すぎる競争と試験地獄は、王朝時代も現代も変わらない中国の伝統なのである。 ---------- 安田 峰俊(やすだ・みねとし) 紀実作家(ルポライター)、立命館大学人文科学研究所客員協力研究員 1982年生まれ、滋賀県出身。広島大学大学院文学研究科博士前期課程修了。著書『八九六四 「天安門事件」は再び起きるか』が第5回城山三郎賞と第50回大宅壮一ノンフィクション賞をそれぞれ受賞。他の著作に『現代中国の秘密結社』(中公新書ラクレ)、『八九六四 完全版』、『恐竜大陸 中国』(ともに角川新書)、『みんなのユニバーサル文章術』(星海社新書)、『中国ぎらいのための中国史』(PHP新書)など。 ----------
紀実作家(ルポライター)、立命館大学人文科学研究所客員協力研究員 安田 峰俊