井上尚弥が「ボクシングやってみる?」と直接スカウト…幼なじみのJリーガー・山口聖矢が29歳でプロボクサーになるまで「目標は新人王」
5月6日、東京ドームで史上始めて日本人プロボクサーとしてのメインイベントを務めた井上尚弥。ルイス・ネリをTKOで下し、プロデビューしてからの成績を27戦27勝(24KO)とした。その井上のこれまでの試合を、涙を溜めながら見守ってきた幼なじみのプロボクサーがいる。山口聖矢、30歳。幼少期から井上家と交流のあったプロサッカー選手はなぜ、現役を一度離れてからプロボクシングの道へと進んだのか。(Number Webインタビュー全2回の後編/前編はこちら) 【画像】「す、すごい足の太さだ!」井上尚弥がスカウトした男、山口聖矢を写真で見る
妥協して続けるよりも…
プロサッカーJ3リーグのSC相模原を契約満了となり、人生の岐路に立たされたときも座間市で一緒に育った幼なじみはそばにいた。2018年末当時の肩書は世界3階級制覇王者。スーパーフライ級からバンタム級に転向しても圧倒的な強さを誇り、日本ボクシング界の夢を背負う存在になっていた。モンスターの異名を持つ井上尚弥は、親友目線の現実的なアドバイスをくれた。 「カテゴリーを下げて、妥協して続けるよりも潔く辞めたほうがいいんじゃないか」 山梨学院大附属高校(現・山梨学院高校)、関東学院大学、北信越1部リーグのサウルコス福井とサッカー一筋で生きてきた山口聖矢も薄々気づいていた。25歳。第2の人生をスタートさせるのであれば、早いほうがいい。どこかで夢を追いたい気持ちもあったが、引き際は肝心である。誰しもが満足いく現役生活を長く送れるわけではない。社会人チームからのオファーは受けず、2018年限りでスパイクを脱ぐことを決意した。
井上家で面倒をみます
「一度カテゴリーを下げ、上がってくるのは難しいので。『たぶん、このまま続けても、そこでサッカー人生は終わりだろうな』と自分でも思いました。それなら、ここで辞めたほうがいいかもしれないって」 引退後は自動車部品を溶接する実父の会社に就職。サッカーは趣味程度で続け、ときどき井上尚弥、弟の井上拓真(現WBA世界バンタム級王者)、従兄弟の井上浩樹(元WBOアジアパシフィックスーパーライト級王者)らに誘われれば、ロードワークに付き合っていた。年始に一緒に走るのは恒例行事。現役を退いてから3年後の2022年1月。いつものように座間市内を走っているときだ。今年の抱負についての話題になり、井上から思わぬ言葉をかけられた。 「『ボクシング、やってみる? 』って。たぶん軽いノリみたいな感じだったのですが、『じゃ、やって見ようかな』と。その場でナオが(父親であり、トレーナーの)真吾さんに電話したんですよ。真吾さんが大橋秀行会長に話をして、『井上家で面倒をみます』という流れになりました」
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