QRコード決済、「公共交通」で普及しない理由とは?進化する決済環境、解決策は「海外との連携」か
進化する鉄道運賃決済
長良川鉄道(岐阜県関市)では、2019年からPayPayを使った支払いが導入されており、実際の運用方法を見てみよう。 長良川鉄道には38の駅があり、すべてに改札が設けられていない。また、運行される列車は車掌を省いた 「ワンマン車両」 で、乗り方は路線バスに近い。乗客は整理券発行機で整理券を受け取り、降車時に回収機に入れる方式だ。 PayPayで支払う場合、乗客は降車時にQRコードを読み取り、運賃を自分で入力して運転士に見せる(ユーザースキャン方式)。一方、長良川鉄道はクレジットカードのタッチ決済にも対応しており、この場合は整理券を取る必要がなく、乗車時と降車時に認識パッドにカードをかざすだけで決済が完了する。 PayPayとタッチ決済の両方に対応している長良川鉄道だが、その運用はコード決済の難点を浮き彫りにしているともいえる。
整理券方式が生む観光の壁
福島交通(福島県福島市)と会津バス(同県会津若松市)は、2023年10月16日より ・PayPay ・楽天Pay ・d払い ・メルペイ ・au PAY などのコード決済を導入した。これにより、約500台の路線バスに新しい決済方式が一斉に導入されたが、長良川鉄道とは異なり、ユーザースキャン方式ではなくストアスキャン方式を採用している。 具体的には、車内に設置されたQRコード読み取り装置を使い、乗客は自分のスマートフォンに表示されたQRコードを読み取らせる仕組みだ。 しかし、福島交通と会津バスの運行でも 「乗車時に整理券を取る」 プロセスは依然として必須となる。もし運賃が一律であればこの過程は省略可能だが、実際には乗降地を正確に把握するために整理券を発行する必要がある。 これに関連して、海外には整理券のない路線バスも多く、初めて日本を訪れるインバウンドが整理券方式に戸惑う可能性もある。この点が、インバウンド産業における小さな障壁となることが懸念される。