「これは思い切ったデザイン」総裁選ポスター、岸田首相は目立たず安倍氏は “超優遇” の裏に潜む「自民党の魂胆」
歴代の自民党総裁の白黒写真がずらりと並ぶ。その真ん中に「THE MATCH」の赤い文字。そこに「時代は『誰』を求めるか?」という文字がかぶさる――。 【写真アリ】ポスターを見て驚く議員たち 8月21日、自民党は9月27日投開票の総裁選に向けたポスターとウェブ動画を公開した。迫力満点のポスターに、Xではこんな驚きの声があがった。 《これは思い切ったデザインにしましたね》 各総裁の写真は党が所蔵する7万枚から選び、作成には人工知能(AI)も活用したという。 ポスターには総裁選にかける自民党の高邁な理念が込められている。中央に描かれた「THE MATCH」の意味を、平井卓也・広報本部長は記者会見でこう説明した。 「政策論争をする戦いであることの『MATCH』と、日本の未来とをマッチングする、国民のニーズと自民党の政策をマッチさせるという意味もあります」 ポスターを見て気になるのは「THE MATCH」という言葉だけではない。歴代総裁によって写真の扱いに明らかな差があることも違和感がある。 ポスターの右下に小泉純一郎氏、左上に田中角栄氏の写真が大きく配置され、退陣するとはいえ現職の岸田文雄総理は左下に小さく目立たない扱いとなっている。一方で目立つのが、ポスターの中央にでかでかと写った安倍晋三氏。この “超優遇” には、Xでも疑問の声があがった。 《話題の自民党総裁選のポスター。これを見てこんな問いが浮かぶ。「なぜ現職の岸田総理の写真より、今は亡き前任者の方が大きいのか?」》 会見でも同様の質問が出た。それに対し、平井広報本部長はこう回答した。 「過去の総裁の仕事だけではなくて、在任期間も十分に考えました。安倍さんが3260日で、ぶっちぎってトップなんですけど、続いて、佐藤さん、小泉さん、中曽根さん、池田さん、そして岸さん、谷垣さん、岸田さんなんですね。 最初は全部、在任期間に比例させようと思って作ってたんですが、そうなりますと、64日間しかやってない宇野さんもいらっしゃって、それではなかなか作りづらいということもあり、今の時代における認知度も考慮しながら作らさせていただきました」 要は在任期間と認知度が扱いの違いになったというのだが、政治アナリストの伊藤惇夫氏はこう喝破する。 「そりゃ、人気のある総裁の写真を大きくしたんでしょう。安倍さんの人気はまだまだあるし、角栄さんなんかは何十年経っても人気があるしね。だいたい、在任期間で選んだというが、岸田さんは歴代8位ですよ。それでも人気がないから扱いも小さくなったわけです。『認知度』は『人気度』です」 そもそも、総裁選は一般有権者に投票権がない選挙だ。こんなポスターをいくら作っても国民には関係ない。 「だいたい総裁選のポスターって、いままで見たことがありません。今回、ポスターまで作ったのは、総裁選を機会に、自民党の人気を回復しようという思いが透けて見えます。こんなところにムダ金使うぐらいだったら、もっとほかに使い道があるだろうと言いたいですね」 自民党が言うように、国民のニーズにマッチした総裁選であってほしい。