東京コアCPI、10月は+1.8%に鈍化 人件費転嫁の広がり限定的か
Takahiko Wada [東京 25日 ロイター] - 総務省が25日に発表した10月の東京都区部消費者物価指数(生鮮食品を除く、コアCPI)は107.9と、前年同月比1.8%上昇した。エネルギー価格の伸び率が大幅に縮小、コアCPIの上昇率は日銀が目標とする2%を下回り、今年4月以来の低さとなった。 日銀が注目していたサービス価格は0.8%上昇で、9月の0.6%上昇を上回った。ただ、公共サービスが伸び率拡大に寄与し、一般サービスは伸び率が縮小した。エコノミストからは、人件費の転嫁の広がりは鈍いとの指摘が出ている。 コアCPIの伸び率はロイターがまとめた民間予測(同1.7%上昇)を小幅に上回った。 エネルギー価格の上昇率は2.5%で、前月の9.5%から大きく鈍化した。電気代は4.0%上昇、都市ガス代は1.8%上昇といずれも前月の伸び率を大幅に下回った。政府の「酷暑乗り切り緊急支援」で総合指数を0.51%ポイント押し下げた。前年同月は政府の電気・ガス価格激変緩和対策の補助金が半減され、電気代や都市ガス代が高めに出ていたことも伸び率縮小につながった。 生鮮食品除く食料は3.8%上昇となり、前月の2.8%上昇を上回った。うるち米(コシヒカリを除く)は65.9%上昇し、1976年1月以降で最大の伸び率を更新した。24年産の新米については、生産コストや運送費の上昇が転嫁されている。 コア対象522品目のうち、上昇が356品目、下落が103品目、変わらずが62品目、非調査対象が1品目。上昇品目は前月の355品目を1品目だけ上回った。 <一般サービス、人件費の転嫁広がらず> サービス価格の伸び率拡大に寄与したのは公共サービスで、一般サービスは1.1%上昇と前月の1.2%上昇から伸びは鈍化した。 一般サービスのうち、外食は3.6%上昇と前月を上回った。コメの値上がりを反映し、すしは5.4%上昇した。一方で、通信・教養娯楽関連サービスは5.6%上昇と伸び率が前月を下回った。前月に8.0%上昇したインターネット接続料が10月は前年比変わらず。前年同月に一部事業者が割引を廃止した影響が一巡した。 賃金と物価の好循環を占う上で、企業の値上げが集中する10月にサービス価格がどうなるか、日銀は注視してきた。総務省では、企業の価格転嫁について原材料価格上昇や人件費上昇による「複合的な要因によるもの」と話している。エコノミストからは、サービス価格への人件費の転嫁の広がりは鈍いとの指摘が出ている。 UBS証券の栗原剛・次席エコノミストは、食料価格上昇に伴う外食の押し上げが目立ち「人件費のサービス価格への転嫁はだいぶ鈍い印象だ」と指摘。引き続き、賃金上昇圧力がサービス価格に反映され、サービスインフレが加速していくとみているものの「今回の結果が弱かったことから、サービスインフレの加速は想定よりもだいぶスローペースになる可能性が高まった」とみている。 みずほリサーチ&テクノロジーズの酒井才介・主席エコノミストは、サービスから一般外食・宿泊料・外国パック旅行費・公共サービス・高校授業料・携帯電話通信料といった円安の影響や一時的要因が含まれる品目を除いた「その他サービス」の伸び率を試算した。その結果、10月は前年比0.66%と、9月の0.78%から伸びが鈍っており、「一般サービスにおいて10月に値上げの動きが広まったという絵姿にはなっていない」という。 酒井氏は、円安修正で食料品を中心に財のインフレ率が来年鈍化していく可能性が高いほか、サービスの中でも外食や宿泊料は円安修正の影響を受けること、来年1月に外国パック旅行費の押し上げが消えることなどを踏まえると、現時点で日銀の物価見通しに対し「オフトラック」(軌道を外れた)とまで言い切るほどではないにせよ「『オントラック』に黄信号という感じがする」と指摘した。 その上で、来年の定昇込みの賃上げ率が4%台後半から5%程度でないと、日銀の2%物価目標達成は遠のく可能性が高いとみている。