ゼレンスキー大統領「北朝鮮交戦説」確認、国家情報院は「沈黙」…韓国「慎重モード」の理由は
ウクライナ政府が5日(現地時間)、「北朝鮮兵士と初めて交戦があった」(ゼレンスキー大統領)とし、北朝鮮軍交戦説を初めて公式確認するなど連日積極的な情報・心理戦を継続している。しかし、韓国情報当局は北朝鮮軍派兵規模および戦線移動事実までを公式発表したのみで、実際に交戦があったかどうかについては一貫して沈黙あるいはNCND(肯定も否定もしない)で通し、慎重な対応を続けている。 ◇40人死亡説など各種諜報が飛び交う 最近ウクライナは、政府次元だけでなく、親ウクライナ志向の非政府組織(NGO)やSNSを通じて派兵北朝鮮軍に関する各種情報や写真、映像を公開している。親ウクライナのテレグラム「Exilenova+」は先月31日、血だらけになった顔を包帯で分厚く巻いた東洋系と見られる男性が「われわれの人員は40人だったが、友人のヒョクチョルとギョンファンをはじめ、全員が戦死した」と話す2分ほどの映像を公開した。このような北朝鮮兵士40人死亡説に対して韓国国家情報院は何の反応もしなかった。 親ウクライナNGO「ブルー・イエロー」も先月25日に「クルスクに投入された北朝鮮軍40人のうち1人を除いて全員戦死した」と発表し、3日には死亡した北朝鮮兵士と推定される死体写真を入手したと主張した。ただし明確な根拠は確認されていない。その他にもテレグラムやX(旧ツイッター)などSNSには北朝鮮兵士の食糧だという「ヌロンイ ケゴギ」(黄色の犬肉)とハングルで書かれた缶詰(北朝鮮では「タンゴギ」と表現)、北朝鮮軍と言いながら中国語を話す男の映像、私製複製品のように見えるが北朝鮮軍が使用している装備という説明がついた写真などが出回っている。 これに関し、専門家はウクライナの立場では韓米をはじめとする西側の積極的な支援を引き出すための情報「物量攻勢」に出ざるを得ないと解釈する。類似立場国の警戒心を高めるために確認されていない諜報もひとまず露出する形を取っているかもしれないということだ。ゼレンスキー大統領も交戦事実を確認しながらも明確な根拠を提示しなかった。 国家安保戦略研究院のユ・ソンオク理事長は「ウクライナの立場では北朝鮮軍の参戦事実を強調して戦線の動きが緊迫した状態であることを印象づけようとしているようだ」とし「北朝鮮軍の士気を半減させるために行う一種の心理戦」と話した。 ◇国家情報院は沈黙…「慎重モード」 これは今月に入って、韓国国家情報院が「慎重モード」に転じたこととは対照的だ。国家情報院は先月18日、北朝鮮軍のロシア派兵事実を確認して異例にも9枚の報道資料と2枚の参考資料を出した。北朝鮮特殊部隊1500人が派兵されたという事実はもちろん、北朝鮮兵士の個人写真まで公開していわゆる「戦略的機密解除」技法を駆使した。続いて先月29日の国会情報委員会国政監査では「派兵された北朝鮮軍はロシア軍事用語の教育を受けているが意思疎通に困難をきたしており、北朝鮮内部では派兵関連の話を遮断するための内部保安対策が用意されている」という事実などを追加で報告した。 しかし国家情報院はここ数日間に次々と出てくる北朝鮮軍交戦や死傷者発生の報道に対しては、ほぼ「言論対応指針(PG・press guidance)」も出さないで沈黙を続けている。米国も北朝鮮軍の戦線配置までは公式確認したが、交戦事実に対しては確認できないという立場だ。 ◇綿密クロスチェック…対応策づくりに腐心 韓米が攻勢的なウクライナの情報戦とあえて歩調を合わせていないのは、ウクライナをはじめさまざまなソースを通じて入ってくる膨大な情報をクロスチェックするために時間がかかるからだ。また、これを事実として公式化した瞬間、対応策も合わせて出さなければならない政治的な負担もあるからだとみられる。北朝鮮軍が実際の戦闘に投入されることは、派兵局面でも変曲点になりえる重大な状況変更だからだ。これに先立ち、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は「ロ朝軍事協力の進展如何により、段階別措置を取る」と述べたが、このような「段階別措置」とは、「剣」が「鞘」の中に収められているときが最も大きな抑止力を持つという判断も作用している。 専門家もウクライナの情報戦に韓国が無理に歩調を合わせる必要はないとみている。高麗(コリョ)大学統一融合研究院の南成旭(ナム・ソンウク)院長は、「ゼレンスキー大統領の立場では米国とNATOを除いて攻撃用武器を支援できる国家は事実上韓国しかないため、積極的に心理戦を展開して韓国の早期支援を誘導する戦略を使うよりほかない」と話した。続いて「ただし、ウクライナの要求にあまりにも早く、あまりにも深く巻き込まれるのは得より損のほうが大きい場合もあるので、よりマクロ的な視点から韓国の安保に及ぼす影響を慎重に検討しなければならない」と話した。 北朝鮮軍の交戦説が事実だとしても、韓国は追加支援に慎重であるべきだという指摘も聞かれる。国防部関係者は6日にも「交戦の有無は見守らなければならない」と話した。 自由民主研究院のユ・ドンヨル院長は「北朝鮮軍の交戦情報は軍事的に大きな意味がない」とし「もし北朝鮮暴風軍団や偵察総局所属の偵察軍がロシア特殊部隊とともにウクライナ後方に浸透してゲリラ戦を行う場合を仮定するなら、その時だけ彼らが持っている力量を発揮すると見られて有意味な軍事的動きを見ることができるだろう」と予想した。