IBF世界Sバンタム級戦で小国と岩佐が「負けたら引退」の因縁日本人対決
だが、小国には「これが最後の世界戦になるかもしれないので、TBSさんにお願いしてアメリカの試合みたいな看板を作ってもらいました。負ければ、もちろん引退です。もう歳なんで」という覚悟がある。 いつも会見には小道具を用意してマスコミを喜ばせるが、この日は封印した。イーグルアイの異名を持つ岩佐にひっかけて案山子の格好で登場しようとプランを練ったが、最終的にはスーツにした。「すべるのが怖かったんで」と、小国はごまかしたが、それはこの試合に賭ける覚悟の裏返しではなかったか。 初防衛戦をクリアすると、WBA同級スーパー王者のギレルモ・リゴンドー(キューバ)との大晦日マッチが計画されているという。リゴンドーは、6月に同級1位のモイセス・フローレス(メキシコ)との指名試合でKO勝利したが、ゴング後に放ったパンチによるものとされ無効試合となった。ダイレクトリマッチをWBAから指令されているため、その動向次第だが、小国にとってみれば、引退か、ビッグマッチかの“人生の分かれ道マッチ”でもある。 天才と呼ばれエリート街道を突き進んできた岩佐も、今なお語り継がれるWBC世界バンタム級王者、山中慎介との日本バンタム級タイトル戦にTKOで敗れてから6年が経った。挫折を味わい、防衛記録を伸ばし続けている山中とは、ずいぶんと引き離された。現在、小国とも立場は逆転してしまっている。 「これがラストチャンスだと思っている。人生をかけて小国を倒しにいく」 トレードマークのパンチパーマもやめた。 2人のボクサーの波乱人生は、9月13日に大阪で交わり、そして勝者と敗者に別れる。そして敗者はリングを去る。残酷だが、人生をリングに投影するのがボクシングなのだ。 すでに王者の小国は、常夏のグアムで走りこみのキャンプを終え、岩佐も山梨で800m×10本などのハードメニューを科したキャンプを消化してきた。小国のパワーとインファイトか、岩佐のセンスと距離とスピードか。眠れぬ夜を数えながら2人は運命の大阪決戦へ向かう。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)