ラグビー日本代表新HCのジョセフ氏ってどんな人? 日本W杯勝てるの?
もっとも、ジョセフへのオファーの裏に日本ラグビー界のビジョンは見えづらい。エディ・ジョーンズ氏のヘッドコーチ退任を受けての動き出しが遅かったこともあり、ジョセフの就任発表は先送りを重ねた。ジョセフには、ハイランダーズとの契約が2016年のスーパーラグビー終了まで残っており、本格的にジャパンの指揮を執るとしても夏場以降となる。6月に予定されているスコットランド代表戦も指揮がとれない。 日本は、サンウルブスとして2016年度からのスーパーラグビーに参戦する。ナショナルチームの強化を促進させるために、有効活用されるべきチーム。本来、代表指揮官には、このチームのヘッドコーチも兼任させる方針だった。しかし今季は予定変更を余儀なくされた。 そのサンウルブスでは、同じニュージーランド出身のマーク・ハメット新ヘッドコーチが就任した。一部では、ジョセフとハメットのラグビー観の類似性を前向きに観る関係者もいるが、2015年のサンウルブスの発足会見時、気になるやりとりがあった。日本代表とのコミュニケーションを聞かれたハメットが、「我々にはやりたいことがある。全部が全部、一緒というわけではない。」と発言したのである。選手起用や戦略術に関する両組織の連関性は、未知数と言えよう。 また日本協会は、ジョーンズヘッドコーチ退任決定後に当時のラグビーを「継承しなければならない」とメッセージを発していた。しかし、ジョセフ氏の就任がその「継承」にあたるかは不明瞭である。組織力重視のオーストラリア出身のジョーンズから、個々の判断力重視のニュージーランド出身のジョセフへのバトンタッチが不可解なのではない。両コーチにとっての「日本人の特性」の定義が、どこまで一緒なのかがわからないのである。 ジョーンズ前ヘッドコーチは、ランやパスの選択回数、縦長のシェイプ(陣形)の形成に活路を見出してきた。何よりどの外国人コーチも口にしがちな「日本人の特性を活かしたラグビーをする」という言葉の「日本人の特性」を、どの外国人コーチよりも明確に定義づけていた。低い姿勢、手先の器用さ、瞬発力、何より我慢強さと、「日本人の特性」に関する有形無形の要素を見定めていた。ワールドカップ直前の苛烈な長期合宿は、そうした観点に基づきおこなわれていた。 一方、現段階では、いまのジョセフが見立てる「日本人の特性」は表に出ていない。オファーを出した側が「日本人の特性」の定義に関するリサーチをしていたかどうかもまた…。