ラグビー日本代表新HCのジョセフ氏ってどんな人? 日本W杯勝てるの?
ちなみに、ジョセフがハイランダーズで優れた指導力を発揮したのは、有力なバディを得てからである。 ニュージーランド代表のマア・ノヌらを擁した2013年度は、15チーム中14位と低迷。元三洋電機(現パナソニック)のスタンドオフであるトニー・ブラウンがアシスタントコーチとなった2014年度シーズンから、戦術の整理がなされたのだ。 ブラウンは、もともと加わっていた元東芝センターのスコット・マクラウドアシスタントコーチと役割分担。外側の選手がせり上がる守備システムや球を奪った後のスペースの射抜き方などを整理して伝達した。 チームが調子を上げるさなか、田中も「ブラウニー(ブラウンの愛称)が入って、1人ひとりが考えて的を射たことを言ってくれるようになった。それをしっかりジェイミーがまとめている感じ。」と証言したことがある。 現日本代表主将で2015年度からスーパーラグビーのチーフスに加入したリーチ マイケルは、こう語っていた。まったく他意はなかろうが、「ジェイミーが(就任した場合)、どんなコーチを(日本に)連れてくるか、それが楽しみです。トニー・ブラウンやスコット・マクラウドが来たらすごい。難しいだろうけど。」と。 ただ、心強い要素もある。イングランド大会で成果を残した代表選手が、バックヤードの出来に左右されづらくなりつつある点だ。当時の副将だった堀江翔太はこう言っていた。 「監督から与えられたチーム戦術戦略を選手が100パーセント理解して、実行する。それにプラスして、どうしたらその戦術略をよくできるのか、どうしたらもっと強くなれるのかを考える。そこが大切になんじゃないですかね。」 世界的に稀有な経験をした選手たちは、与えられたソフトを自主的にアップグレードできるようになった。少なくとも、そうなりつつある。かたや田中も、ハイランダーズ躍進の真の肝を、こんな風に掲げている。 「ベン・スミスとナシ・マヌがキャプテンになって、小さいことを積み重ねてチームをまとめている。『試合が近い時はお酒を飲まない』『チームで何かするときは少しでも顔を出す』とか…」 「ハイランダーズはチームがまとまっている。コーチ陣が話し合って、それを選手に落とし込んで、リーダー陣を中心に話し合って…。そのシステムがしっかりしていました。」 スタッフにすべてを依存しない点が、ジョセフ率いるハイランダーズのよさだったのかもしれない。最近になってからも、こんな逸話を明かした。 「ブラウニーから話を聞いたことがあるんですけど、『自分はまだヘッドコーチはできない。ジェイミーがいてこそ、自分(の仕事)が活きてくる』と。ハイランダーズのことも2人がいいバランスで引っ張ってきたんだと思います。」 威厳のある上司と、その威厳をリスペクトしつつも自分たちなりの強化方針を練り上げる部下。その相乗効果が、2016年以降のジャパンの見どころとなりそうだ。 (文責・向風見也/ラグビーライター)