富士通CHRO平松浩樹さん:変革の起点は従業員の声。現場・経営との関係性を軸に富士通の戦略的人事をリード
日本の人事部「HRアワード2023」企業人事部門 最優秀個人賞に輝いた、富士通株式会社 執行役員 EVP CHROの平松浩樹さん。 ニューノーマル時代を見据えて人事・総務・IT部門が一体となった改革を断行し、巨大組織・富士通に新たな働き方を根づかせる原動力となりました。現在は新たな中期経営計画に基づく戦略的人事をリードし、人材ポートフォリオの見直しも大胆に進めています。 そんな平松さんの原体験には、若手時代に苦労を重ねながらも現場との連携を進めたHRBPとしての気づきがありました。さらに変化が加速していく時代にあって、人事パーソンには何が求められているのか。 これまでの平松さんの歩みや富士通の挑戦とともに、日本の人事が目指すべき将来像を聞きました。 [[「HRアワード」の詳細はこちら>https://jinjibu.jp/hr-award/]]
従業員の声を起点に、縦割りを乗り越えて富士通を変革
――「HRアワード2023」企業人事部門 最優秀個人賞を受賞された感想をお聞かせください。 大変光栄に感じています。今回の受賞は、私たち富士通がDX企業へと変わっていく中で、人事制度変革を大胆かつ粘り強く進めてくれた人事部門メンバーみんなの努力と、全社的な変化への不安や戸惑いを乗り越えてくれた全従業員の取り組みが評価されたものと受け止めています。その意味でも心からうれしいです。 日本企業は今、大きな変化を迫られています。人事の仕組みには企業を超えて共通する課題も多いので、私が富士通のデータをどんどん共有して、これまでに挑戦したり悩んだりしてきたストーリーとともに伝えてきました。そうした発信が多くの方々の役に立っているのであれば、これに勝る喜びはありません。 ――富士通が進める変革の取り組みに注目する方はとても多いと思います。直近では、どのような課題を乗り越えてきたのでしょうか。 富士通では「ワークライフシフト」をコンセプトに、2020年7月から新しい働き方を導入しています。コロナ禍の緊急事態宣言のもとで突然リモートワークを余儀なくされ、不具合や混乱もあって、従業員全体がストレスにさらされている状態でした。そんな時だからこそ、アフターコロナを見据えて、ニューノーマルな時代にはどう働くべきなのかをいち早く宣言しなければならないと考えたのです。 そこでハイブリッドワークを基軸とし、従業員が自ら最適な時間や場所を選択して働けるようにしました。あわせてオフィス環境やIT環境、人事制度も一体的な見直しを断行。この背景には大きな投資に関する判断もありました。 国内従業員約8万人からサーベイを取り、何に不安を感じ、どんな働き方を望んでいるのか、生の声をたくさん聞いたのですが、出てきた課題は人事だけで解決できるものではありませんでした。そこで、人事・総務・IT部門が三位一体でアイデアを出し合い、新たなコンセプトを作り上げたのです。 従来も、人事だけでは解決できないテーマに対して他部門を巻き込もうとしたことがありましたが、それぞれが自組織の理屈に縛られてしまい、なかなかスピーディーに動けませんでした。しかし今回の変革では、どの部門がリードするかではなく、たくさんの従業員から集まった声を起点にしてプロジェクトを進めていくことに注力することができました。 私たちコーポレート部門が一枚岩にならないと、従業員の期待には応えられません。経営陣もスピーディーに決断してくれましたし、新制度の発表後は多くの従業員からポジティブな声をもらいました。縦割り組織を超え、従業員の声に応えてコラボレーションしながら大胆に課題を解決していく。それが大きな価値を生み出すために欠かせないことを実感しています。