イチから分かるマイナ保険証 12月2日に本格移行、資格確認書とは
12月2日から新たに紙の健康保険証が発行されなくなります。マイナンバーカードが健康保険証としても利用できる「マイナ保険証」に本格移行させるためです。病院やクリニックの窓口でのやりとりに変化はあるのでしょうか。政府が唱える導入のメリットなどと合わせ、これからの利用方法などについてQA方式でまとめました。【古屋敷尚子、松本光樹】 【図解】マイナ保険証あり、なしでどう変わる? Q 12月2日以降、紙の健康保険証は使えなくなるの? A 既に発行されている紙の健康保険証は、経過措置として最大1年間は使えます。会社員や公務員、その扶養家族が使う健康保険証は有効期限が記されていないので、来年12月1日まで利用できます。 一方、自営業者やフリーランスが入る国民健康保険だと、有効期限が設定されているため、その期限までになります。ただし、転職や転居などをした場合、その時点で使えなくなるので注意が必要です。 Q マイナ保険証を作っていないと、医療機関での診療は全額自己負担になってしまうの? A そんなことはありません。資格確認書を提示すれば、今まで通り治療費の1~3割の自己負担分だけ支払えば受診できます。資格確認書の取得に申請は不要で、12月2日以降、マイナ保険証を持っていない人に健康保険組合などから届く予定です。有効期限は最長5年で、期限はそれぞれ異なります。ただ、永続的に更新は可能です。 Q 自治体から「資格情報のお知らせ」という書類が届いたけど、これが資格確認書なの? A 資格確認書とは異なります。このお知らせには保険証番号などが記されていて、マイナ保険証を持っている人にも届きます。医療機関の端末のシステムエラーなどでマイナ保険証を読み込めない時があるため、診療がスムーズに受けられるよう医療機関に提示する予備的な書類です。ただし、このお知らせだけでは受診できません。 Q 政府はなぜマイナ保険証を普及させようとしているの? A 政府は将来的に、診療や治療データを活用し、医療従事者の業務やシステム、データ保存を共通化することで、病気の予防や良質な医療提供につながる医療DX(デジタルトランスフォーメーション)の実現を目指しています。 診療内容が書かれた電子カルテの情報を病院間で共有するサービスを始めており、紙の処方箋をデジタル化した電子処方箋のシステムを組み合わせることで、将来的に患者の病歴などを迅速に共有することも可能になります。 年100億円前後に上るとされる紙の健康保険証の発行コストが削減されるメリットもあります。 Q 何か分かりにくいけど、患者にとってメリットはあるのかな? A 例えば、過去の受診歴や投薬情報が見られるため、同じような薬を複数の医療機関で処方する無駄を省けたり、飲み合わせの悪い薬が分かったりするかもしれません。 患者の病歴を共有できることで、医師による適切な診療を受けられるようになると、政府は強調しています。 手術などで医療費が高額になった時に患者の自己負担を一定額に抑える「高額療養費制度」を利用した場合、全額を一旦窓口で支払った後に一部が払い戻されていました。今後はこの立て替えが不要になります。 Q 医師に過去の病歴を見られたくない人もいそうだね。 A 病院や薬局でマイナ保険証を読み込むカードリーダーがあるのですが、過去の診療情報を提供するか画面で選択できます。同意した場合のみ、これまで処方された薬や診療行為、手術の内容が医師に伝わるようになっています。 Q 今はどれぐらい普及しているの? A マイナンバーカードを保有しているのは、10月末時点で人口の75・7%です。このうち、マイナ保険証の利用登録をしているのは82%です。一方で、窓口などでマイナ保険証を利用していた人は10月に1657万人で登録者の21・4%。件数ベースでは15・67%にとどまっています。 Q 利用率はなぜ上がっていないのかな? A マイナ保険証に別人のデータなど、誤った情報が登録されるトラブルが相次いだことが影響しているとみられます。政府は昨年、一斉点検を実施し、自治体による手作業のミスが原因だったとしています。システムそのものに問題はないとして、マイナ保険証を利用するよう呼びかけています。 Qマイナ保険証の解除ができると聞いたよ。 A 10月下旬から解除できるようになりました。会社員らは健康保険組合、国民健康保険に加入する自営業者らは自治体で解除を申請できます。手続きには1カ月ほど必要なようですが、解除されれば12月2日以降、資格確認書を使うことができます。