「死後の精子採取」がイスラエルで加速している深刻な理由
イスラエル最大の精子バンクは、テルアビブのスーラスキー医療センター内にあり、5万3000以上の精子サンプルを保存している。 【画像】中国の採精室 生きている者から精子を採取するのは容易いが… 英紙「フィナンシャル・タイムズ」の詳細な取材記事によれば、そのなかには、「死亡したイスラエル軍兵士たちの遺体から採取された」精子もあり、それが遺族に「死後の生の可能性」を提供しているという。 イスラエル軍は2023年10月11日以降、兵士の遺体から「迅速に」精子採取する選択肢を遺族に提供している。2023年10月7日のハマスによる未曾有の攻撃後9ヵ月間で、死亡した兵士160名と民間人15名の遺体から生きた精子サンプルが採取されたとイスラエル保健省は報告している。
誰が決めるのか?
スーラスキー医療センターの精子バンクと男性不妊治療科で主任を務めるノガ・フックス・ワイツマンによれば、この処置は、2023年10月7日以降に死亡した兵士の3割ほどに施されたという。 死後の精子採取175例のうち132例が「故人のパートナーよりもむしろ親から依頼された」もので、この行為にかかる規制が緩和されたことを物語っている。 イスラエルにはいまのところ精子採取に関する正式な法律がなく、「事前の書面による同意なしで」実施できるし、死後受胎も認められている。あるのは「判例のみ」だ。 10月7日以前では、この処置を求める遺族は、裁判所命令を得る必要があった。だが、ハマスによるイスラエル人の虐殺がこの必要条件を変えた。その攻撃の直後、政府は「生殖作戦指令室」を立ち上げ、精子採取には裁判所命令が必要だとする条件を撤廃したのだ。
Courrier international