衆院選「漁夫の利」で議席大幅増、野田立民への不安 政策は増税と引き締め路線、実行すれば失業者が多発する
【日本の解き方】 立憲民主党が衆院選で議席を大幅に増やした。今後、国内政策や外交、経済にどんな影響が出るだろうか。 【写真】「もっと下に…下に」“半ケツ”状態でビラ配りをするボランティア女性 衆院選では、「人気が高い」と思われていた石破茂首相が、発言のブレや解決済みの「政治とカネ」を蒸し返す戦術ミスなどで火だるまになった。そこで漁夫の利を得たのが野党第一党の立憲民主党だった。 今回の選挙戦は、争点が「政治とカネ」の問題に終始し、経済政策や外交・安保に割く時間が少なかった。そもそも首相就任から、衆院選までの期間も短かったので、政策論は生煮えだった。 相対的に浮上した立憲民主党だが、その政策は、とてもほめられたものではない。本コラムでも指摘したが、野田佳彦代表は、金融所得課税の強化や法人税の引き上げもあり得ると述べた。 金融政策についての見解もひどく、日銀の物価安定目標を「2%」から「0%超」に変更するとしている。インフレ率が0~2%なら、失業率が最低水準であるNAIRU(インフレを加速しない失業率)を示す2%台半ばをかなり上回ってしまう。おそらく120万人くらいの職が失われるだろう。 また、低いインフレ率だと、名目賃金上昇率がインフレ率を下回ることもしばしばある。このため実質賃金の上昇率がマイナスになりがちだ。 「最低賃金1500円以上」も掲げているが、これが無理筋なのは本コラムで何度も書いている。 こうしてみると、立憲民主党の政策は、かなり石破政権と似ている。率直にいえば、石破自民と野田立民の政策が接近している。 選択的夫婦別姓や原発に依存しない社会の実現、日米同盟が外交安保の基軸だとしつつ、安全保障関連法に関しては違憲部分の廃止を掲げ、外交や安全保障は、極端に180度すぐ変えることはできないとし、現状維持をにじませている。 このように、左傾化している石破政権と、右傾化した野田立民は、政策が驚くほど似ている。もし、石破政権が今後も続くのであれば、大連立もあり得るかもしれない。そうであれば、野田立民の政策はかなり実現するだろう。 しかし、衆院選で石破政権が自滅したので、自民党内の政治力学からいって、石破政権がこのまま継続するというのはなかなか考えにくい。