「女子枠」反対の声根強いが…理工系大で加速、入試改革の必要性
理工系の大学入試で女子枠の導入が広がっている。男女の極端な偏りをなくすのが目的だが、「筆記試験の点数のみで見るのが公平だ」と反対する声も根強い。しかし複雑化した現代社会で必要な人材では、従来とは異なる能力や伸びしろが重要になる。女子枠を含む多様な選抜方式が予想以上に増える中で、一般社会はこの点を理解する必要がある。(編集委員・山本佳世子) 30秒でわかる「国際卓越大学」 女子枠反対の声は卒業生や受験生家庭から多く聞かれる。理工系トップの東京工業大学は、変革に向けて思い切った人数を設定したこともあり、批判の矢面に立ってきた。 しかし女子枠に限らず、筆記のペーパーテストで学力を問う「一般選抜」以外の、多様な選抜法が近年、急速に浸透している。「総合型選抜」「学校推薦型選抜」の合計は2023年度に半数を超えた。一般選抜はもはや半数以下、というのが日本の今の姿だ。 受験生集めが厳しい私立大学では「早期に新入生を確保したい」と、総合型・学校推薦型を年内に済ませる設計にし、学力が十分でない学生も集めるという。しかし、実は旧帝大などトップクラスの国立大学でも一般選抜以外の選考法は増えている。東工大では女子枠設定前から約1割を振り向けていた。東北大学は3割で、いずれ10割との計画を立てる。 これらの大学では当然ながら、総合型選抜でも学力不問にはならない。「数IIIの履修は必須」「物理の口頭試問あり」などの確認を経て、面接や小論文などで論理的な発信力・表現力といった能力を見る。 東工大の井村順一理事・副学長は「一般選抜の受験生は、点数を取ることだけが目標になりがちだ」と指摘する。イノベーション創出の潜在力が高い生徒を、これで選び出せるかというと疑問符が付く。対して総合型選抜などの受験生は「こういうことがしたい」と目的意識が高く、入学後の成績やリーダーシップも優れる傾向にある、という声が複数の大学で聞かれた。 各大学が求める学力水準を満たした受験生に対し、さらに1点差で合否を決める一般選抜と、個性や社会性をみて人材を集める総合型選抜がある。その人材多様性を図る切り口の一つとして、女子枠があるといえる。 「これだけ改革を進めているのに、世間の大学評価はいまだ偏差値ばかり」。この悔しさはトップクラスの大学関係者の間でも共通のものだ。一般選抜や偏差値を超えた、真の人材育成の議論を深めていくことを求めたい。