自民、公・国「離反」で孤立 企業献金巡る攻防越年
自民党が政党支出の一部を非公開にできる「公開方法工夫支出」の新設を断念したのは、与野党各党の理解を得られなかったためだ。 【写真】立憲民主党の後藤祐一氏に答弁する自民党の小泉進次郎氏 立憲民主党や日本維新の会はスクラムを組んで「政策活動費の温存」と反発。公明、国民民主両党も派閥裏金事件への世論の批判を踏まえて距離を置き、自民は孤立した。企業・団体献金を巡っては議論の越年を余儀なくされ、存続への道筋は描けていない。 「撤回してでも政活費を廃止するのは一つの前進だ」。自民の坂本哲志国対委員長は16日の立民との合意後、政治資金規正法再改正を今国会で実現するには公開方法工夫支出の撤回はやむを得ないと苦渋の表情を記者団ににじませた。 自民は10日から議論がスタートした衆院政治改革特別委員会などで、公開方法工夫支出の必要性を繰り返し説明。石破茂首相も衆参両院の予算委員会で「家庭内暴力や性犯罪の被害者から話を聞いて謝礼を支払ったとき、氏名が出るのは誰がどう考えてもおかしい」などと力説した。 これに対し、立民は「第2のブラックボックスになる」(野田佳彦代表)と反論。維新や共産党も立民と歩調を合わせ、溝は埋まらなかった。 自民の頼みの綱だった公明、国民民主両党も一線を画した。自民が部分連合の相手と位置付ける国民民主は「年収103万円の壁」見直しで与党と合意し、2024年度補正予算案に賛成。だが、政治改革に関しては立民などの政活費廃止法案の共同提出に参加し、自民を突き放した。 国民民主幹部は党内に「『自公国』と言われないように」と指示。13日以降は自民との修正協議も立民に委ねた。立民中堅は「国民民主を巻き込んだことが最後に効いた」と語った。 公明も自民と歩調を合わせず、政治資金を監査する「第三者機関」の設置法案を国民民主と共同提出した。衆院選で自民の「裏金候補」を推薦し、党内外から批判を浴びて敗北を喫したことが念頭にあり、公明幹部は「自民と一緒にやることは考えられない」と語った。 政治改革を巡り、首相は年内に実現すると約束。会期末が21日に迫る中、孤立した自民には野党の言い分を受け入れる以外に選択肢はなかった。 最大の焦点だった企業・団体献金の扱いを巡っても、自民は立民の要求に応じて「年度末までに結論を得る」と確約せざるを得なかった。規正法再改正を今国会で決着させ、年内で派閥裏金事件の幕引きを図る自民の思惑は外れ、与野党の攻防は来年に持ち越されることとなった。 来夏には参院選が控え、立民幹部は「通常国会で大きな争点になる」と手ぐすね引く。自民中堅の一人は「企業献金は悪ではないと説明していくしかない」と肩を落とした。