なぜ?DeNA・東が難攻不落のエース左腕に進化した理由 20年にトミー・ジョン手術受け変わった思考とは
球界を代表する難攻不落な左腕として、DeNA・東克樹投手(28)は今季、その地位を確固たるものにした。最多勝に輝いた昨季から2年連続でのハイレベルな活躍の裏に、どんな進化があったのか。 左腕には、信念がある。「日本は勝ち星を重要視する部分が強いけど、僕は先発としては長いイニングを投げることが大事だと思っている」 昨季は自己最多の16勝を挙げ最多勝に輝き、今季も現在リーグ2位の13勝をマーク、防御率2・12。昨季8月4日の阪神戦から今季9月3日の広島戦まで、32試合連続でクオリティースタート(=QS、先発で6回以上、自責3以下)も達成した。こだわりを持つ投球回数は巨人・戸郷の180回に次ぐリーグ2位の178回で、すでに昨季の172回1/3を上回る。「現状維持は退化」と語る左腕が、有言実行の結果を残している。 ルーキーイヤーの2018年に11勝を挙げ新人王を獲得。だが翌年に左肘を痛め、2020年にトミー・ジョン手術を受けた。術前と術後で、投球スタイルだけでなく、投手としての思考も変わったという。「以前はスピードばかりを追い求めていた。でもそうじゃないんだなと思えたことが、僕にとってすごく大きかった。平均球速もだいぶ下がったけど、そこじゃないところでどう抑えるかを追求している」 ここに、2年連続で実績を残してきたヒントが隠されている。「状態が悪い試合は何試合もありましたが、試合中にうまく修正することができている。だからこそのQS達成だったと思う」。投球術という最大の武器が、東の進化を引き出した。 小杉投手コーチが明かす。「実は今季、コマンド(狙ったところに正確に投げられる能力)、平均の出力は昨季より落ちていました。去年の水準まできたのは、7月くらいだったと思う」。球団が独自で集計する数値は、最多勝、最高勝率を獲得した前年より下回っていた。だが同コーチは、数字だけでは見えないレベルアップを明言する。「昨年の経験や駆け引き。ここはボール球でもいいやとか、ここは初球からストライクを取っていこうとか、その辺の考え方がすごく良かった」。さらに「彼の試合勘、感性、捕手とのコミュニケーション…。人に聞き、人の主観も取り入れ、そこに自分の考えも落とし込む。そして取捨選択が瞬時に判断できる。頭の回転の速さがなければ、2年連続で結果は残せない」 昨季までチームに在籍し米大リーグ・カブスに移籍した今永の存在も、東にとって影響力を与えている。「背中を追い続けられることが、僕にとってモチベーション。今永さんがいなくなって、自覚みたいなものが芽生えてきたのもある。今永さんもメジャーで頑張っていますし、それに負けたくない」 チームはCS進出をかけ、レギュラーシーズン残り8試合を連戦で臨む。東は過密日程で2度の先発が予想されるが、Aクラス死守へ、己の信念を突き進む。(デイリースポーツ・福岡香奈)