国内2冠の山本尚貴は5年ぶりの日本人F1ドライバーになれるのか?
ホンダ側もスーパーライセンスの申請の可能性を否定しなかったことから、多くの人々が5年ぶりの日本人F1ドライバー誕生に期待を寄せるが、スーパーライセンスを取得したからといって、すぐにF1ドライバーとしてレースに参加できるわけではない。 F1ドライバーになるために最も厳しい関門は、F1のシートを得ることだからだ。 というのも、19年のシートはすでに20シート中、18シートが確定済み。残る2つも最終戦アブダビGP前後に決まる可能性が高い。四輪での海外レースの経験がない山本をいきなり抜擢する勇気のあるチームは、まずいない。 だが、山本にまったくチャンスがないわけではない。ホンダがF1でパワーユニットを供給しているトロロッソのリザーブドライバーとなって、F1のテストを担当したり、グランプリ初日のフリー走行でF1マシンを走らせる道は残されている。その走行でチームからの信頼を得て、なおかつ来年のトロロッソ・ホンダのドライバーがあまりにも不甲斐ない走りしかできなかった場合に、山本にチャンスが巡ってくる可能性は十分考えられる。 問題は山本にF1へチャレンジするという強い意志があるかどうか。現在、山本は30歳。2年前の16年に、テレビ東京アナウンサーの狩野恵里さんと結婚し、今シーズン前には双子の娘さんが誕生したばかり。F1へ挑戦する場合は、家族と離れて生活をしなければならない。 ただし、もしここでF1への挑戦を行わなかったら、二度とそのチャンスは巡ってこないだろう。 また、なかなか条件を満たす若手が育ってくれないホンダにとっても、山本の存在は貴重だ。ホンダは来シーズンのヨーロッパでの若手ドライバーの参戦計画を発表していないが、だれが参戦するにせよ、スーパーライセンスを取得できる40点を獲得するのは簡単ではない。 レースはF1がすべてではない。しかし、スーパーフォーミュラを2回、スーパーGTを1回制したドライバーには、日本はレースをするには少し狭い場所ではないだろうか。国内主要2冠を達成した日本人ドライバーを世界も待っている。 (文責・尾張正博/モータージャーナリスト)