月商たった9万円、豆腐と納豆だけの食事…3度の倒産の危機を乗り越えた「性格が正反対な夫婦」の起業物語
■人が決めたルールに従うのが嫌 一方の瀬川は、大学の研究室でも破天荒ぶりを発揮しまくった。 自動車エンジンの研究をメインとする熱力学の研究室に入ったものの、実験グループに組み込まれたことが面白くなく、わずか3日で教授からクビを宣告されてしまう。先輩から指示された通りの実験をやることが嫌で、それが態度に出てしまったらしい。 「実験をやる代わりに、すでに卒業した先輩がたった1人で研究していた天然ガスの熱力学特性の研究論文を教授から渡されて、続きをお前がやれと言われました。この研究のためにAIと統計を勉強したことが、後にFULL KAITENの開発に生きてくるんですから、ほんま、人生にムダはないんですよ」 とにかく瀬川は、人に指示されるのが嫌、人が決めたルールに従うのが嫌な人間であるらしい。 「なにしろ奈良県の大和郡山という田舎に生まれて、両親はいつも仕事でいなかったので、遊びでも何でもすべて自分で考えて、すべて自分で工夫してやっていたんです」 大阪の福島区という都会の下町で、相当におせっかいな父親に育てられた宮本とは、見事に対照的である。 ■1社目では「やる気のない社員」として上司を困らせた 瀬川は大学を卒業すると、外資系のコンパック・コンピュータ(後のヒューレット・パッカード)に就職している。 研究室の仲間たちを眺め回して、自分は研究者には不向きだと判断した瀬川は大学院に進学せず、ビジネスサイド(営業職)で就職するという、異色のキャリアをスタートさせている。 出席日数の件では、高校生らしからぬ交渉力を発揮した瀬川だが、コンパック入社当初は、ほとんどやる気のない働きぶりで上司を困らせていた。 「毎日、一所懸命にやっていたのは先輩社員の経費精算でした。経費精算はめんどくさいので、僕が代わりにやってあげて1回当たり5000円ぐらい貰っていました(笑)」 そんな瀬川のグータラ社員ぶりに業を煮やした営業マネジャーは、わずか1年で瀬川を別の部署に配置転換させることを部長に進言した。しかし、部長は何を考えたのか、入社間もない瀬川にノルマを与えて様子を見ることにしたのである。