イニエスタの今季初ゴール背景にフィンク新監督の戦略
来日3年目になる元ドイツ代表FWルーカス・ポドルスキ(34)が、昨シーズンから務めていたキャプテンを突然返上した。開幕戦からそろい踏みしてきたFWダビド・ビジャ(37)、イニエスタ、ポドルスキの“VIPトリオ”も、4月以降は必ず一人ないし二人が欠ける状況が続いてきた。 方向性を見失った感のある戦いぶりが続くなかで、リーグ戦の連敗は「7」に、YBCルヴァンカップを含めた公式戦の連敗は「9」に伸びた。吉田監督は4バックを3バックに変え、ロングボールを多用した現実的な戦法で何とか連敗を止めたが、フロントは同時進行で後任探しに着手していた。 アーセナルを22シーズンにわたって率いた名将で、名古屋グランパスの元監督としても馴染みの深いアーセン・ベンゲル氏の名前も一時は取り沙汰された。しかし、最終的に白羽の矢を立てられたのはスペインでのプレーだけでなく、スペインで指揮を執った経験もないフィンク監督だった。 現役時代はバイエルン・ミュンヘンなどドイツ国内でプレー。監督としてオーストリア、スイス、母国ドイツなどで監督を務めた経験をもち、スイスの古豪グラスホッパー・チューリヒの監督を今年3月に解任されてからは無所属だった。フィンク監督は、外からヴィッセルを観察せざるをえなかった状況下で、初陣のFC東京戦へ臨むにあたっての構想を固めていた。 「対戦相手よりも、私たちのストロングポイントにフォーカスすることに重点を置いた」 ヴィッセルのストロングポイントとは、リージョ路線で進められてきたポゼッションサッカーに他ならない。コンディション不良に苦しみ、欠場を強いられてきたイニエスタを、それまでの中盤の前目のポジションではなくボランチで起用した理由をフィンク監督はこう説明する。 「彼はどこでもプレーできるが、今日はより低目でビルドアップを手伝えるポジションに置いた。そこから前を向いて、彼のボール支配率を生かし、たくさんのチャンスを作ってもらうプランを描いた」 比較的プレッシャーを受けないエリアで、ボールは何度もイニエスタを経由して仲間たちへ散らされた。だからといって、ポゼッションだけに傾倒するわけではない。リージョ監督時代は一度も共演していないビジャとブラジル人FWウェリントン(31)を、前線で縦に並べた意図をこう説明する。 「ウェリントンをビジャよりもあえて少し下げた位置でプレーさせたのは、彼はボールを収めるのが上手いからだ。FC東京がプレスをかけてきたときには前線へ長いボールを入れて、それをウェリントンが収めることで彼の背後にスペースが生まれ、そこを上手く利用することができた」