「百花斉放・百家争鳴」最後は弾圧…声を上げられない歴史的背景も 中国・無差別殺傷事件から見えた社会の不満を解説
■不動産不況、現在の中国経済は
━━ 2024年には不動産バブル崩壊なども報じられたが、今の中国の経済状況はどうなのか 「不動産不況は長引いている。また、デフレ傾向が強まっている。例えば日本のサイゼリアや鳥貴族も進出するなど、デフレに強い企業が中国で人気になっている。消費の単価や意欲が下がってきていて、激しい価格競争も起きているので、今、一部で利益が生まれない競争と言われ始めている。 日本は、バブルがはじけて以降は景気がいい状態を経験していないので、不況慣れしているようなところもある。しかし、中国は長らく景気がいい状態が続いていたので、不況には慣れておらず、こうした状況に戸惑っている部分もある。これまでの世代と違って、若い世代は一生に一つも家が買えないという状況も生まれてきている。 経済の立て直しについて、中国政府は投資をもっと呼び込みたいと盛んに言っているが、 一方で、対外関係には、海洋進出なども含めて強硬姿勢が見える。そういった路線を敷いているのも経済とは矛盾しているようにも見えている」
■「中国の人たちは意見を表明することがリスクになることを常に考えている」
━━ 不満があったとしても、中国では指摘したり声を上げたりしにくい印象があるが、そのあたりはどうか。 「表現したり訴えたりする方法が少ないのも問題だと思う。SNS上で自由な表現をしても削除される。また、中国には古くから信訪制度(しんほうせいど)があり、相談所のような場所に訪問して訴えを起こしていたが、近年、その動きが制限され始めた。 一方で、広東省の政府が運用しているアプリでは、自分たちの意見を政府が聞いて解決していくシステムができている。 ただし、中国はかつて、「百花斉放・百家争鳴(ひゃっかせいほう・ひゃっかそうめい)」という経験をしている。1956年に中国共産党が政権への批判も含め自由な発言を呼びかけたが、党に対する厳しい意見があまりにも出過ぎたため、声を上げた人たちが弾圧される対象に変わった。 またコロナ期間中、中国では健康コードというアプリがあった。緑のコードの場合、自由な移動ができるが、赤のコードになったら移動が制限される。そのため、意見などを訴えたい人たちを、わざと赤いコードにして移動を制限するということもあった。 こうした経験から、中国の人たちは、情報を意図的に操作されたり、意見を表明したりすることがリスクになることを常に考えている。先日、北京の新聞に『6年間で1.5億件の相談やクレームを受け付けた』『解決率と満足率が97パーセントに達した』という、いかにもタイミングを見計らったような記事が出た。今、一般の人たちが思っている気持ちを、中国政府は非常に気にしていることがわかる」 (ABEMA NEWS)
ABEMA TIMES編集部